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相良「・・・この写真の人、名前は何て言うんですか?」
ハルカ「志流 一真。私の父親がわりだった人です。」
相良「志流・・・一真・・・」
この名前も、どこかで聞き覚えがあったが、俺の記憶の中の人物と仏壇に飾られた顔写真の人とは、名前が違っていたら別人、他人のそら似という事だろう。
それにしても、よく似ているな・・・鈴木太一さんと・・・
鈴木太一
俺が歌舞伎町で出会った男で、バカみたいに強く、俺を狙っていた死霊跋扈を次から次へと薙ぎ倒し、俺を親の仇の一人である大國真司の元へ連れてきた人物。
顔立ちと佇まいから、仏壇に飾られている志流一真さんと、俺が出会った鈴木太一さんは良く似ていて、唯一違いがあるとすれば、穏やかな表情をしているかどうかだ。
この幸せそうな表情は、俺の知る鈴木さんからはとても想像できない。
相良「・・・」
ハルカ「さて、と。」
ハルカさんが、立ち上がる。
ハルカ「私は色々とやることがあるので、何かあれば声をかけてください。この孤児院の中も自由に使ってもらって大丈夫です。」
相良「はい。ありがとうございます。」
ハルカ「ゆっくりしてくださいね。」
そういうと、ハルカさんは部屋から出て行く。
ただ布団で寝ているだけでは、体も鈍ってしまうと思い、ガチガチに固まった筋肉を解すため、立ち上がって孤児院を散策していると、庭に干してあった洗濯物をハルカさんが取り込んだりと家事に勤しんでいた。
洗濯物と言ってもかなりの量で、一人二人の量ではなく恐らく10人前後分の量だった。
そういえば子供達の姿が見えない、ふと時計を見ると現在の時刻は昼過ぎの12時半、多分、学校にでも行っているのか。
「だぁー」
相良「おわ!!」
突然足元で赤ちゃんの声が聞こえ、思わず驚いて大きな声を出してしまった。
相良「あ・・・」
すると、みるみるうちに四つん這いでハイハイしていた赤ちゃんの瞳はうるんでいき。
「う・・・う・・・ピギャアアアア!!!」
案の定大泣きしてしまった。
相良「ご、ごめん!!驚かすつもりはなかったんだ!!えっと・・・!!」
必死に謝ってはみたものの、意味は無いよな。えっと、どうしよう・・・こういう時は・・・抱っこ?
相良「よしよし!!ごめんよ!!」
俺は赤ちゃんへ手を伸ばし、お腹を胸に抱きかかえて、背中をポンポンと叩いた。
相良「よしよし・・・」
少しだけ体を揺らす。すると・・・
「だぁ・・・」
相良「ふぅー」
どうやら、泣き止んでくれた様だ。ほっと胸を撫で下ろす。
ハルカ「あ!!ごめんなさい!!」
その様子を見て、ハルカさんが大きな洗濯籠を抱えてこちらへと近づいてくる。
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