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そう思ったのが、間違いだった。
「パンツ落ちてこなかったー?」
恥ずかしげもなく、大声で叫ぶのは……隣のクラスの派手女子。確か、桜川さんだ。確実に周りにも聞こえたパンツの一言で、全員が一斉にこちらに振り返った。
「えーっと黒山さんだっけ、パンツ落ちてこなかった?」
なんで? え? 華も恥じらう女子高校生が、同級生の前で、どうして、そんなに、え? 何回もパンツって大声で連呼できるわけ? 馬鹿なの? いやこいつは、馬鹿だ。馬鹿だな、うん、だからパンツパンツ大声で叫べるんだ。
「これのことかな?」
すっとぼけながら、くしゃくしゃに丸めてしまったパンツをポケットから取り出す。
「そうそう、それそれ! ありがとー」
ひょいっと人差し指で軽く摘み上げて、そのまま足を上げる。
待て待て待て待て、待て、待てって!
「ちょっと!」
慌てて桜川さんの腕を掴めば、きょとんとして私を見つめる。さっき大声でパンツって言ったせいで、今、私のクラスメイトはみんなこちらを見ているんですよ。えぇ、わかってらっしゃ……いや、こいつ馬鹿だからわかってて履こうとしてるわ。
落ちてきたパンツ。いや、ノーパン……え? パンツが脱げて、グラウンドに落ちること学校である?
「なに」
「流石にここでお着替えはちょっと、あの、ね?」
「だって私今ノーパンだし」
「なんで、いや、それはいいの。あと声をもう少し……」
止める私の言うことは耳に入っていないようで、引き止めた手はするりと外されて。恥じらうそぶりもせず、パンツを履く。
人が触ったパンツ履くの嫌、じゃないんだろうなぁこの人は。
「パンツ、キャッチしてくれて助かったー! ありがとうね」
「なんで、落としたの?」
「ん?」
んふふっと声に出して笑って瞳を伏せる。かわいいなこのやろう。恥じらいもないし、大声でパンツっていうし、人前でパンツ履くし、馬鹿っぽいけど。
かわいいな、このやろう。
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