3. 養鶏場傍

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「ま、待て……っ」  氷塊を落とされる恐怖に、アーロンは慌てて声を上げた。すると少女は葉巻を吸う仕草で右手を口に当て、上向きに白い息を吐き出した。 「覚悟ができるまで、待ってあげる?」  唇を真一文字にしたハチミツが、目をすがめた。微笑か嫌悪か分からないその表情に、男の焦燥が加速する。 「わ……私を殺したら、ここで働いている女たちは路頭に迷うんだぞ?!」 「エミリアおばさんが、続きはやってくれるって」 「頭の弱い女どもに、経営なんかできるはずがないだろ!!」  うわずった叫びが、夜の空気を震わせる。  ぽたり  首すじに水滴が落ちた。ハッと視線を上げたアーロンの目が、氷塊に釘付けになる。 「ひぃ……っ」  氷の斧にはびっしりと少女の顔が写り、その全員が恨みのこもった目で、アーロンを凝視していた。 「適材適所、とか言ってたね、さっき」 「あ……ひ……」 「それならあんたにふさわしい場所は、地獄だよ」  ハチミツは静かな声で宣告し、左手をゆっくりと、上向きに開いた。  ゴッ  落下した氷の刃が、一瞬で男の首を斬り落とす。分断された体を、氷塊が地面に押し潰した。  衝撃で砕け散った首斬り石の破片が少女の頬を掠め、白い肌に鮮血が流れる。ハチミツはその血を拭うこともせず、蕾泥棒の成れの果てを、じっと見つめていた。
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