1話 八海山と、がんもと椎茸の煮物

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1話 八海山と、がんもと椎茸の煮物

 酒屋をしていた祖父が亡くなった。  元々母子家庭だった私は、母と祖父との三人暮らし。でも、結構楽しい生活だった。  食堂に勤めていた母は料理を食べるのも作るのも好きで、子供の頃から色々と教わった。美味しいものを食べるのは一つ幸せな事だっていう信念を見た。  祖父は小さな店舗でお酒の販売をしていた、気の良い爺さんだった。酒が好きで、成人してからはよく一緒に酒を飲んだ。私も好きだったし。  そんな二人に育てられた私は料理の道に進み、日々黙々と上に言われるまま何かしらを作っている。  趣味は酒だ。ガバガバ沢山飲むんじゃなくて、好きなものを日々少しずつ飲むのが好きだ。  こんなだからだろう。いい加減言われるがまま、反応も分からず裏方で料理を作り続ける事にも飽きてきたタイミングでの祖父の死をきっかけに、ここで料理と酒の居酒屋を開こうかな、なんて漠然と思ったのは。  幸い、祖父はそれなりに溜め込んでいた。私が成人してから再婚した母は生活に困っていないからと私に遺産の取り分を多くしてくれた。そして私も、日々推し活以外では給与を使わなかった事でそれなりに資金があった。そして、祖父は店舗兼住居である店を私に残してくれた。  酒の販売ルートもある。祖父が維持してくれていたもので、亡くなった折にこちらの話を持っていって小口ながらも継続で入れてくれる事になった。  改装はしたし、仕事も辞めた。元の備品は最大限活用した。  そうして無事に城を手に入れた私は、日々無理のない生活をしている。
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