それぞれの嫉妬

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「今日はどうしたの、なんか、めっちゃ求めるじゃん」 リョウが繋がったまま動きを止めて、私を広げたまま、私を見下ろしながら頭頂から頬を経由して首元を撫でる。 口角を上げて平然を装ってはいるものの私を目掛けて降ってくる汗の粒、そして眉間に寄る皺。こちらも返答する余裕はなくリョウの首に回した両手を思いっきり引き寄せて彼の首筋とそこに掛かるシルバーに唇を寄せてから彼の唇を舌でなぞると、意図を汲んで動き出した彼に満足しながら最後まで身を委ねた。 「……嘘か本当かわからない話なんだけど、聞いてくれる気ある? 」 「それが原因で惑わされた結果、今日の激しいみぃを堪能できたんだったら感謝を込めて聞きたいかな」 事がある程度終わり、ベッドに沈む私に今日は手渡しで冷たい水を持ってきてくれたリョウは数分前とは打って変わって余裕を振り撒きながらベッドに腰掛ける。 「彼、自分の高校の学生と噂になったことがあるんだって」 「え? でもまだ高校教師やってるよね? 」 「別に手を出したとかなんらかの関係があるとかじゃなくて精神的な恋愛?みたいな。口には出さない輪郭のない両思いとかそんな類だったって。まあ、その子はもうすでに卒業していて今は大学生らしいんだけど」 「で、みぃはそれを知っちゃって動揺してこんな激しくなっちゃったのか」 可愛いね、と続けてケラケラと笑いながらベッドに横になったリョウは私と枕の間に腕を差し込んで自身の二の腕に私の頭を乗せた。 「誰から聞いたの? 本人? 」 「……ロミオくん」 私とマモルさんの間を裂くための虚言である可能性ももちろん大いにある。でも私にはマモルさんの含みを持たせたあの日の言葉が引っ掛かっていて。そこに上手く付け入られたなと自分でも思った。小さな綻びに指を突っ込まれてビリビリに裂かれたような感じ。 そこから少し、嫌ではない沈黙を過ごしているとリョウが腕枕をしている方の手で私の頬を摘まむと思いっきり横に引っ張った。歯茎に触れていた頬の肉が離れてプチュっと空気の入ったような音がする。痛い、地味に痛い。 「なになになに」 「彼が精神的な浮気をしていたのを知って動揺しちゃうのも、ロミオくんの嘘か本当かわからない話を信じちゃうのもなんかそれぞれへの愛を感じて妬けるなって急に思っちゃって」 見上げると目を細めてニコニコとした、特に悪意なんて無さそうな表情をしたリョウを目が合う。いつぞやに感じたこと。気を引く為に。愛故に。彼が私に痛みを与える理由があるとすればそれだ。 「絶対俺が一番、みぃのこと好きだよ」 そう言いながら私の顔を覗き込んだかと思えば、すぐに見下ろされる形になり、唇がゆっくりと額に降ってくる。そのまま首筋、鎖骨、胸へと下がり始め、覚悟した私は目を閉じて快感に集中する。彼の唇の温度以上にネックレスが触れる冷たさのどこに落ちるか予想のつかない緊張感が私を奥底から震えあがらせた。
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