英語演劇部で日本昔話の泥棒を演じた話

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 じゃあ、この話を小説にすればいいじゃないか、というところですが、結局頑張ってお芝居は成功に終わった、という程度のことしか言えません。脚色して青春小説にしようにも、私は青春小説を書くことが苦手でした。自分をエモい青春小説の主人公にするのも、気恥ずかしくてやりたくないですね。そんなことをしたら、主人公たる自分をうっかり殺してしまいそうですが、この話の場合それではオチになりません。なのでこの話はこれでおしまいです。  英語演劇では、他にもう一つやりました。悪の女興行主です。  ヒロインである、歌の上手い盲目の女の子をだまくらかしてサーカスに連れ去る女です。止むを得ない都合で悪役にさせられた可哀想な女ではなく、本当に悪辣で欲深く業が深い、純粋な悪党でした。これも楽しかったです、悪役を演じるのが。  思えば私はその前から、悪役を演じるのが好きでした。  小学校の『走れメロス』では、山賊をやりました。「身包み脱いで置いてきなァ」という台詞を吐くわけです、小学六年生の女子が。最後のァがポイントです。  それから、全校児童を集めた朗読の時間で、『その後のうさぎとかめ』という絵本を読みました。かけっこで亀に負けたうさぎが口封じのため亀を始末にかかる、恐ろしい話です。その中で、 「お前のような奴は、死んでしまえ!」 とうさぎが叫び、亀を谷底に蹴り落とす、というシーンがありました。  私はこのセリフを迫真の演技で読んでしまい、結構たくさんの一年生を泣かせてしまいました。今思うと、この台詞は恐ろしい調子で読むよりは、可愛く怒っている風な雰囲気を出した方が解釈としては正しかったかもしれません。言っていることと行動はえげつないですが、なんせうさぎですからね。  それにしても先生は、なんでこんな話を朗読の題材に選んだんでしょうか?
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