変態と林間合宿

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* * *  風が吹き抜けていくと、そこかしこから擦れ合う葉音が耳をくすぐる。   視線を落とせば、地面では木漏れ日がチラチラと揺れて目を楽しませてくれた。時間も時間のため、それなりに熱いはずだが、木陰にいるせいか大したことはなかった。   「何を黄昏れている」  地面を映していた視界に靴が覗き、次いで慣れ親しん声が耳に届いた。   「……自由時間なんだから、誰が何を見て黄昏れようとかまわないでしょ」  言いながら、声の主へ視線を向ける。予想どおり、そこには偉そうに顎先を上げて佇む幼馴染の姿があった。 「何処へ行く」  森の方へと足を進めると、三国はごく自然に俺の横へ並んだ。どうやら着いてくるつもりらしい。   「ちょっと散歩」 「教師があまり深く行くなと言っていたが」 「わかってるよ」  今日は林間合宿2日目。  昼食後、班ごとの軽いスタンプラリーを終えた俺たちだが、今は指定の時間まで自由行動となっていた。  こんな何も無いところで自由行動を許されたところで、何をしろというのか。   とはいえ、わざわざ森に来ている手前、ただ部屋にいるというのも勿体なく感じた俺は、とりあえず外へ出ることにした。しかし、なんとなくで外に出てみたは良いものの、やはり特にすることもなかった。    歩いている際、それとなく周りを観察してみたが、おぼっちゃまの集まりの割には、殊の外楽しんでいるようだった。  具体的に何をしているのかまではよく分からなかったが、各々携帯を持ち寄って集まり、ワイワイ楽しそうに話していた。ギリギリ電波が届く位置でやっているあたり、なにかのゲームか?  ひとつ不思議なのは、わざわざ電波の届きづらい森の方でやっていることだろうか。立って携帯をいじっているだけなら、涼しくて座れるコテージの中でやればいいと思うのだが。森に近いこちらでは回線も遅く、やり辛いだろうに。 「急に散歩の気分になったのか」 「…………さあ。急でもないけど」  先程までの事を思い出していた俺は、スタスタと歩みを進めながら適当に返した。  しかしと言うべきか、それでは満足しなかったのか、隣からその先を促すような視線を感じてため息を着く。   「まぁ……なんか、視線が鬱陶しかったから」  それに気が付いたのは、自由時間になって程なくしてからだった。
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