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* * *
教室に着き、目当ての人間を探すが見当たらない。
まだ授業は一限残っていると言うのに、一体何処へ行ったのだろう。
俺は教室を見回し、後方の席で一人携帯を見ていたクラスメイトに声をかけた。
「ちょっといいかな」
「は、はい! どうしたんですか? 織部さま!」
「あ、うん。……三国見てない?」
クラスメイトの勢いに軽く引きつつ、聞きたいことを聞く。
「三国くんですか? …………あ。そういえば、」
「? どうしたの」
「あー、えっと……結構前なんですけど……」
「うん?」
「その、織部さまの帰りが遅すぎるとか何とかで、突然『拙い、生徒会か……あいつの貞操が危うい』とか声を上げたかと思えば飛び出して行ってしまって……授業中だったし、結構な騒ぎになってたんですけど……」
……おいおい、人が居ないところで何してんのかな。
思わず片手で目を覆って小さくため息をつく。
そして、聞く限りもはや貴重でもなんでもない情報を教えてくれた小柄な生徒は、心配そうな顔でこちらを見上げてきた。
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「……うん、ごめん。ありがとう」
「い、いえ! …………あ、なのでそろそろ────」
ガラガラ─────バンッ!!
「織部!!」
「…………」
うるっっっさ。
ねぇ、音量バグってる?
生活音も声も馬鹿みたいに大きいんだけど。
怒らないようゆっくりと息を吐き、こめかみを抑えながら瞼を伏せ努めて冷静になろうと頭の中を整理する。
「おいなんだその顔は。まるで情事後のような色香を放って…………あぁ、やはり手遅れだったか……仕方がない。こうなれば………さぁ、その珍しく上まで留めた釦を外し襟首を晒せ。俺にエクs────···」
ブチッ。
俺は自分から詰め寄って来た三国の頭をガシっと鷲掴むと、そのままミシミシミシと音が聞こえできそうなほど圧をかけた。
こいつはさっきから、マジで何を言ってるんだろう。
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