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* * *
「あ、いたいた〜! もう、旭も陽もどこ行って────···」
寮のエントランスに入ると、そこには既に軽い人集りが出来ていた。
その中心を見れば、案の定こちら……正確には双子に手を振っているらしい金髪の生徒────生徒会会計、七草 楓が目に入った。
「って……織部くん?」
「こんにちは、七草くん」
「こんにちは〜。今日も相変わらず綺麗な顔だねぇ」
生徒会役員である会計に加え、庶務である双子が入るとエントランスは更に騒がしくなった。
「旭も陽も最高、織部くん連れてくるとかお手柄〜」
「でしょでしょー!」
「もっと褒めてー?」
「2人とも欲張り〜」
緩くウェーブした豊かな金髪は揺れ、鮮やかな赤色の垂れた瞳が彼の物腰のやわらかさに拍車をかけていた。
まあ、風紀曰く物腰や見た目がどうあれチャラ男なのには変わりないらしいが……って、ほら見た事か。
「……ね、せっかくだし今晩部屋にお邪魔させてくれない? サービスするしぃ」
……せっかくだしの意味がわからないし、とりあえず腰に手を回してくるのやめて。撫でるんじゃない。
それに…………あぁ、ほら。
そんな事をそんな声と顔で言うから、あちこちで劈くような黄色い歓声が上がってるじゃないか。
俺の耳を壊す気だろうか。
「あーー! カエちゃんがヨリちゃん誘ってるー!」
「ヨリちゃんが食べられちゃーう!」
彼はとりあえず誰にでも言ってるだけなので、実際そんな事にはならない。俺にとってのせめてもの救いである。
なんて、三人の茶番に内心で冷静に返していると、ドタンっと何かが落ちる音がした。
「っ……う、うぅ」
「ちょ、ちょっと……大丈夫っ?」
嫌な予感がする。
「…………」
最悪だ。面倒な事になったかもしれない。
端の方で1人の生徒が崩れ落ち、隣にいた友人らしき生徒が背中を支えてやっていた。大方、会計の親衛隊だろう。
ガチ恋勢か……厄介だなぁ。
「じゃあ、俺はそろそろ……」
「「もう行っちゃうのー!?」」
当然だ。いくら役職持ちだからと言って、こんな人集りの中生徒会役員とそう長く話してはいられない。
「まぁまぁ〜。また東屋先生にお使い頼まれて来るでしょ、すぐ会えるよぉ」
「それもそっかー」
「そうだねー」
「……じゃあ、またねヨリちゃん!」
「またねー!」
「うん、またね」
“お使い”の件に関しては思ってても言わないで欲しかったが……今回はそのおかげで双子が引き下がってくれたのでまぁ、良しとしようと思う。
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