織部色の人生

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「…………織部。今日は良い天気だったな」 「? うん、そうだね。気温も丁度いいし」 「今週は末まで晴れるそうだ」  不意に投げかけられた、天気の話題。  ただの雑談か、それとも何か他の意図が。  ……まあ、三国の事だからなんの意図もないのかもしれないな、と思考を切り捨てようとした矢先。 「週末、何処か出掛けないか」  突然の誘いに目を丸くした。  誘われて気付いたが、思えば学園の外へ出たのは何ヶ月も前だ。 「……結構、久しぶりかも」 「知っている。高等部が始まってからは何かと忙しくしていただろう。気分転換にどうかと思ってな」  …………ほんと、普通にしてればむしろ良い奴なのに。  俺は三国の澄んだ黒色の瞳を見つめ、つくづく勿体ない奴だなぁ、と頬を弛めた。  が──── 「東屋とお前がペットプレイをしている間の放置もなかなかだったが、流石にそろそろ飽きてな」  もう一度言おう。  ()()()()()()()、良い奴なのに。  俺は今さっき自分の中で芽生えた『三国ってやっぱ、良い幼馴染だな』という、僅かな見直しの気持ちをものの数秒で打ち砕かれた。  俺のささやかな感動を呆気なく裏切りやがった三国(あほ)の頬を抓…………不味った。俺は抓ってからようやく気付いた。 「何をする……っ!? 何故急に褒美を与える! まだ早い! 放置プレイのエンディングは何処だ!? 何故分からん!」  知らんし知りたくもない。  そして、意味分からんし分かりたくもない。  ……ははは、忘れてた。  ここぞとばかりにドM発言を炸裂させる三国の頬をぱっと解放し、俺は思わず遠い目をしてしまう。  ほんとに扱い辛い幼馴染だね、お前は。 「全く……褒美に前菜は要らんと言うのに」  ……いや、なんで俺が咎められる?  毎回思うがマジで何を言っているのか分からない。 「あ、三国様だ。今日も振られてるー」 「隊長またやってんな〜」 「頑張れー! 三国さまー!」  ……聞こえただろうか、“隊長”という言葉が。  そう、これは他でもなくこの学園特有の“親衛隊”なる組織においてのまとめ役のようなもの。彼らの言葉を聞いてわかる通り、隊長とは三国のことである。  そして、その“親衛”対象だが……果たして信じられるだろうか。本人からこんな扱いを受けているこの俺である。
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