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今、おれの頭はこれ以上ないほど混乱を極めていた。
「……“全裸待機”、なんでしょ?」
「ヒヘ………ッ」
そう言うなり、推しはおれの体操服の襟に指をかけてくいっと引っ張った。おれは瞬時に脳内シャッターを連写しまくった。そして鼻血も出た。
大変えろ……間違えた、いかがわし……じゃなくて。
魅惑的なサービスフェイスをありがt────…
ってぇ!? そーじゃなくて────っ!!
これダメなやつううっ!! いつの間にかおれがっ、受けポジションになってるからあああっ!?!?
一拍遅れて嬉しそうな悲鳴が響き渡り、既に溢れかえっていた人混みへと、なんだなんだと更に人が集まってきた。お前らどこにいた。
うぉいw口笛やめろい金持ち校w
治安悪すぎか? ってそれより……
「も……文字通りの全裸はっ! さ、流石に絵面的にヤヴァいのでは……!?」
「大丈夫。今更だよ」
「おれの扱いっ!?」
おかしいな、おれの扱いがいつの間にか三国くんなみの雑さに……って、透ちゃんめっちゃ撮ってるんだがw
って笑ってる場合じゃない。
三国さ……ま、はさっきどっか行っちゃいましたね!?
じゃあっ、草n……あ、固まってるや。ありゃあかん。
ひ、氷室ど、の…………うんんん? 駄目だ、なんか顎に手を当てて涼しい顔で考え事してらっしゃる。あれは今助けを求めても期待できないタイプの匂いプンプンだった。
…………おれは悟りを開いたかのような表情で諦めることにした。神は推しの幸せをご所望なのだ。きっとそうに違いない。
おれは甘んじて見世物パンダを受け入れた。
──…その後、その場に居合わせたありとあらゆる腐男子に連写され、夥しい通知音で他方から送られてくる不純物の写り込んだ写真を即保した。
そして推しの攻め攻めしい姿だけをキレイに切り取って待ち受けに設定したあたりで、おれの心臓が無事ハッピーな事になったのは言うまでもない。
「…………ふっ」
そして推しが珍しくご満悦そうだったのでパシャリとシャッターを切った俺は両頬を抓られこれでもかと伸ばされた。至福。
ていうかうちの推し、指までやらかいんだが。
「……俺の周りはMが多いね」
「いひゃ、えうれはらいでふ」
あの、ていうか推しさま? めっちゃおもきし引っ張られすぎて普通に喋れんのだが……。
「どうだろうねえ」
しかも『Mではない』といったのに、何故か信じて貰えなかった。まあ、理由は分からないものの推しが何処と無く楽しげだったので、とりあえずオールオッケーとする事にしてひとつ頷いておいた。
「おひがよけえはふべへよひ」
「?……ごめん、なに?」
「どえふ」
「うん。それはわかった」
今度は伝わったらしい。
「オカワリだね?」
「ひがうw」
いや、全然伝わってなかった。
やっぱり推しはS属性まで兼ねているらしい。悪どい笑みも似合いますね。一生推します。なので写真撮ってもいいですか。ア、だめ? やっぱり?
えー……じゃ、いつなら盗撮イケるかな……。
絶賛“邪”な考えでヒッタヒタになっているおれに対し、推しは訝しげな視線を向けていた。
最近、おれに対してよく動くようになった推しの表情。無論友好的な方では無いが、俺の興奮はもはや留まることを知らない。
おれはひとり穏やかな顔で頷いた。
……萌え写、今後も期待してマスっ!!
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