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※切れ目が悪かったので、次話長めです。
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しばらく2人で歩くと、何処かしらから聞こえていた話し声は聞こえなくなり、人の気配も消えた。
「そういえば……」
ちょうど夢の話題だったため、話のネタにと最近よく見る過去の話をしてみることにした。
隣を歩く三国がなんだなんだと興味ありげに促してくるので、勿体ぶらずにさっさと話す。
「最近よく夢に出てくるから思い出した話なんだけど…………3、4年前くらいかな? 俺が書いたものじゃないみたいなんだけど、なんでか手帳を持ってて……たしか、その時の俺はそれを何処かに仕舞ったはずでね」
しかし夢でそれを思い出してから、実家の部屋を探してみるも見つからず、確かに仕舞ったはずなのにと不思議に思っていた。
「俺、どこに隠したんだろうね」
そう、少しふざけて変な言い回しで三国に笑いかけた時だった。
しかし、三国はじっと俺を見つめると、暗く濁ったような瞳をサッと何も無い森の方へと逸らしてしまった。
「…………何処だろうな。それほど探して見つからないのなら、既に何かの拍子に捨ててしまったんだろう」
「……そうかな」
三国はすっと顔を背け、スタスタと歩き出してしまった。なんだ、急に不機嫌だな。
俺は珍しく虫の居所が悪いらしい幼馴染の背をしばらく見つめた。
……まぁ、いつもは逆だしな。
機嫌が治るまで今日は俺が見守ってやろうと、呆れた心境でとりあえず三国のあとを追うことにした。
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