恋焦がれ

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 満員電車の中、ぶつかってきたのは向こうなのに、こちらをにらんで舌打ちしてきたサラリーマン。  他のお客さんには「いらっしゃいませ」と声をかけているのに、私のことはちらっと見ただけだった靴屋の店員さん。  お気に入りのピンクのシャーペンを使っていたら、「似合わねー」と鼻で笑った隣の席の男子。  他にも思い当たる節はいろいろある。  そう、私はかわいくない。  親友の香奈は目がぱっちりしていて鼻筋がすっと通っている。歯並びもきれいで、笑うとえくぼになるほっぺたがかわいい。おまけに背が高くてスタイルも抜群だ。性格もサバサバしているから男女共に人気がある。  同じ人間なのにどうしてこうも違うんだろう。  もしこれで太っていたら、ダイエットすればかわいくなれるかもしれない、と期待することもできたのに。はあ……私は何度ついたかわからないため息をもらす。  香奈とは小学校が同じで、四年生の時に隣の席になったことがきっかけで仲良くなった。クラスは離れたり、同じになったりを繰り返していたけれど、不思議と疎遠になることもなく、クラスが一緒になれば同じグループになって行動していた。
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