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 入学式前日。  新生活を目の前にして布団に入っても目がさえ、なかなか眠りにつけなかった。そうこうしているうちに段々と暗闇に包まれていた部屋の中がほの明るくなって、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえてきた。多分すずめだ。時計を見ていないから、正確な時間はわからない。けれど、朝だ、と思った瞬間に、それまで張っていた緊張の糸がぷっつりと切れたらしい。お母さんに体を揺すられてようやく私は自分が寝ていたことを知った。  空に雲一つない、入学式うってつけの日に、私はぼさぼさの髪の毛で空腹のまま、寝不足のさえない顔で学校までの道を走ることになった。普段なら生徒がたくさん歩いていそうな通学路も、人っ子一人いないで静まりかえっている。
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