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 その瞬間。先生らしきスーツ姿の若い男の人がおそるおそるクラスに入ってきた。  ざわついていたクラスが一瞬静まりかえり、皆の好奇の目が先生に注がれる。 「今日からこの三組を任されました葛城です。実は僕も君達と同じで初めて担任を任されちょっと緊張しています。よろしくね」  クラスの皆も少し緊張した面もちで、頭を下げた。 「先生よろしくー!」なんていうひょうきんものはこのクラスにはいないらしい。眼鏡の奥に光る目が頼りなさげでなんだか親しみを覚えた。  それから私たちは入学式のために体育館まで移動することになった。私のクラスは同じ小学校の子たちが固まっているのか皆、キャッキャッと楽しそうに教室を出て行く。  こういう新しい場所での女子の結束力はあなどれない。自分だけグループに入れなかったらどうしよう。もっと早く学校に着いていたら、誰かに話しかけるか、話しかけられるかしていたかもしれないのに。  ぎりぎりに学校に着いた自分を悔やみながら、私も教室を出ようとすると、「由希子‼」と後ろから呼び止められた。
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