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どろぼう、どろぼう。
これは、私が中学生だった時の話。怖いっていうのもそうだけど、いろんな意味で驚かされたって話でもある。教訓もかねて、聞いてくれると嬉しい。
私は中学生の時、吹奏楽部に所属してた。ちなみに、普通の公立の中学校。自慢じゃないけど、住んでいた地域は結構治安も良かったし、公立とはいえ学力もそれなりに高い方だったと思ってる。県内トップの高校に進学する子がたくさんいたわけだから、多分その認識で間違ってない。私も、そこそこの偏差値の進学校に行ったしね。
だから学校そのもののレベルも民度も、けして低いところじゃなかったと思う。部活の雰囲気も悪くなかった。吹奏楽部って全体的に女子が多い印象にあると思うんだけど、うちの学校もその例にもれず、吹奏楽部に居るのは見事に私も含めて全員女子。見えないところで悪口とか諍いもひょっとしたらあったのかもしれないけど、少なくとも私が見た限りでは荒れている部活ではなかったと思っている。
私達一年生がたくさん入ったこともあって、全部で五十人弱の人数がいる、結構規模の大きい部活になってた。
残念ながら、吹奏楽コンクールで県大会を突破できるほどの実力はなかったんだけど、みんな和気藹々と、それでいて練習は熱心にやるような部活だったと思う。
初心者で、ユーフォニウムをやることになった私。先輩たちはみんな親切で優しかった。彼女達に不満なんて全然なかったと思う。
ただ一つ。とんでもない問題があることを覗けば。
『みんな結構真面目っぽいけど、悪いことしようと思ったことってあんのー?』
ある日の、練習の合間。先輩達が雑談の中で、そんなことを言ってきた。悪いことって?と私は首を傾げたものである。夏休みの宿題をサボったとか、こっそり夜遅くまで遊んだとか、そういうことだろうか、と。
そうではなかった。トランペットをやってた、その二年生の先輩が言いたかったのはもっととんでもない話で。
『この中に、万引きやったことがある人、きょーしゅ!』
『!?』
私はぎょっとした。万引きって。あっさり言っているけれど、犯罪ではないか。
真面目な優等生ではなかったが、それなりに普通の倫理観を持っていたつもりの私からすると、開いた口が塞がらないような話だった。本人が笑いながら、自ら手を挙げたから尚更に。
でも、もっと驚いたのは。
『はーい!』
『はいはーい!』
言い出しっぺの、トランペットの先輩――不便だから、リナ先輩とでもしておこう。リナ先輩以外にも数名、二年生と三年生からちらほら手を挙げる人がいたからである。
むしろ、その場で雑談していた先輩たちの殆どが手を挙げたのだ。
『あ、やっぱり?みんな一回や二回はやるよねえ』
なんてとんでもないことを言いながら。
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