5人が本棚に入れています
本棚に追加
***
繰り返すが、万引きは犯罪である。こんな名前がついているせいでなんだか倫理観が薄れているのかもしれないが、立派な窃盗行為であるし、十四歳以上にもなれば充分逮捕されることもありうる行為だ。
親切で、優しい先輩達が平然と万引きに手を染めていたことが信じられなくて、私は結構なショックを受けた。そもそも、何でそんな恐ろしいことができるのだろう。悪いこと、というだけではない。普通は“バレたら怖い”とか、“大人に知られたらどうしよう”とか、そういう抑制が働くものではなかろうか。
『あ、あのう……万引きって、どこで万引きするんですか?コンビニとか?』
多分、私と同じような心情だったのだろう。恐る恐る、といった様子で同じ一年生の女の子が質問した。すると、ドン引かれていることにも気づかない様子のリナ先輩は、コンビニでもやらないことはないけどね、と笑ったのである。
『やっぱ、一番はあそこかな!ツボタ文具!駄菓子も売ってるし、死角多いし、結構盗み放題なんだよね。カオリちゃんたちもやってみる?楽しいよ』
『い、いえ、いいです……』
いじめで、パシリの子に万引きをさせる人が多いのかと思っていたが。彼女達は一種の刺激的な娯楽として、自分で万引きをやることを楽しんでいたらしい。
その感覚が、私はどうしても信じられなかった。大好きな先輩達に、そんな愚かな行為をしてほしいとは到底思えなかったのである。
その日の部活のあと。フルートの一年生で仲良しだったカオリちゃんに私は相談した。これ絶対いけないことだよね、と。しかし、私達は一年生。表立って、いけないことだ、と先輩達に言う勇気はない。
しかし、私以上にこのことを真剣に捉えていたらしいカオリちゃんは、凄い提案をしてきたのだった。
「ツボタ文具ってあそこだよね、学校のすぐ裏にあるとこ。あたし、やっぱ先輩たちがやってることは駄目なことだと思うの」
だから、とカオリちゃんは強い正義感を持ってして言ったのだった。
「きっと部活の帰りとかに文具店に寄って、頻繁に万引きしてるのよ。あたし達でそれを止めよう!」
最初のコメントを投稿しよう!