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その時、例のリナ先輩はまだ誕生日が来てなくて十三歳だった。三月生まれだと本人が言っていたのをよく覚えているのである。彼女は万引き癖の悪ささえなければ充分に優しくて明るくて気の良い先輩だった。他のパートである私やカオリちゃんの名前もすぐに覚えてくれたくらいには。
十三歳なら、警察に突き出されてもきっと逮捕されることはないはず。それで一回親にでも連絡がいけば、リナ先輩も反省するし、それを見た他の先輩たちもきっと考えを改めるはずだ!というのがカオリちゃんの考えだった。
私は気が進まなかった。それをやるということはつまり、私達で彼女を万引きの現行犯で捕まえるということである。確実にリナ先輩には嫌われてしまうし、部活としての空気も悪くなってしまうのではないか。しかし。
「マイちゃんがやらないならいいよ、あたしが一人でやるから」
そう友達に言われてしまっては、どうしようもない。私はカオリちゃんと一緒に部活後ツボタ文具に先回りして、リナ先輩たちを待ち伏せすることにしたのだった。
無論、本当に彼女達が万引きの常習犯だったとしても、その日に万引きするという保証はどこにもない。狭い店内で見張るのはかなり難しく、すぐにバレてしまう可能性もある。果たしてそううまくいくものか、と私は正直不安だった。そもそも、今日も文具店に寄るかどうかがかなり怪しい。いくら部活後にまだ外が明るい季節であるとしてもだ。
「それならそれ、リナ先輩が来るまであたし達が見張るだけ!刑事ドラマの基本でしょ!」
「私達刑事さんじゃないよーカオリちゃん……」
やややる気が空回り気味の彼女に、どうにか付き合うことにした私。――結論を言うと、意外なことにこの張り込みはたった一日で終了することになるのだ。それも、カオリちゃんが飽きたとか、そういいうものとは違う理由で。
――ああ、先輩……!
張り込み一日目にして、私達はビンゴを引き当てた。古めかしい、さながら小さな小屋のようにぽつんと畑の横に建っているボロボロのツボタ文具店。私とカオリちゃんが棚の影に隠れていると、何も知らずにリナ先輩が一人で店を訪れたのである。
しかも、彼女は流れるような手つきで、小さなガムの一つをポケットに入れていた。ああ、止めなきゃ。そう思ったのに、私はすぐに声が出せなかった。カオリちゃんもだ。どうやら土壇場になってびびってしまったらしい。
そして、私達が迷っているうちに、リナ先輩の方が隠れている私達に気づいてしまった。
「あり?カオリちゃんにマイちゃん、どうしたの?二人ともお買いもの?」
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