7人が本棚に入れています
本棚に追加
二.五駅目 連絡先のご利用は─。(こぼれ話)
「なぁ、武晴くん。」
「なんですか?明斗さん。」
─ガタンゴトン
朝の電車に揺られ、今日も明斗さんと話していた。
そんな時、明斗さんに改めて俺の名前を呼ばれた。
なんだろうか。
「その、だな、前に連絡先交換しただろ?」
「あ、そうですね。
それがどうかしましたか?」
あ、なんだ、その事か。
それがどうしたのだろうか?
「連絡先交換したのはいいけど、今の今まで何も活用してねぇけど…これ交換した意味あったか?」
「…え?あっ、あ〜〜言われてみればそうでしたね。」
明斗さんに言われて初めて気付いた。
確かに俺、連絡先交換しといて何もやってない。
そりゃそう言われるのも仕方がないと思う。
で、でもあれなんだ。
そう、あれだ。
…明斗さん、そんな不思議そうな顔してコテンと首を傾げるのちょっとやめて欲しい。
なんというか…カワイイ//
「ん?なんで顔赤らめてんだ?」
「あ、いえ、これはなんでもない、です。」
「そうか?」
「あ、あっー、何で連絡先交換しといて何も活用してないかの質問でしたよね!
えっとですね、それはですねえーっと…//」
話を無理矢理戻したものの、言えない。
なんて内容を送ろうとして書いては消してを何度も繰り返して、結局何も送信出来ずにいただなんて。
「…?」
あっ、だからその首こてんは。
しょ、正直に言うしかない、よな。
変に誤魔化そうとしても上手くいく気がしない、し。
あ〜//
「その、ですね……〜っ!
な、何度も送ろうとはしたんですよ!
でも、明斗さんとの初めてのメールのやり取りだから大事にしたいなって思って。
だから、なんて内容のメールを送ろうか迷いに迷って、その、今の今まで結局…送れずじまいになってしまったんです…//」
ボフン!
言った、言ったぞ。
最後の方恥ずかしさでボソボソッとなっちゃったけど。
でも、また俺、あの時みたいに絶対顔真っ赤だ。
恥ずかしい。
俺はどこぞの乙女だと自分にツッコミたくなった。
「……?あれ、あきとs─へ?」
カァアア
「は、な、なな何だよ、それ。
え?初めてだから大事にしたいからとか、それでなかなか納得いく内容のメールが作れなくて結局送れなかったとか……なん、なんだ、このなんとも言えねぇ感情は///」
うっそ、明斗さんも顔が真っ赤だ。
え、なんで?
明斗さんの赤に染まる頬に、自分も改めて顔に熱が灯る。
だって、だってさ、その反応は。
「も、もしかして明斗さん、顔が赤くなってるの、照れてるんです、か?」
「……………はぁっ?!て、照れ!
ばっ、別に照れてなんかねぇよ。
これはちげぇ。
これはただ暑くて顔が顔が暑くなってるだけでそういうわけじゃ。」
「「……………。」」
…うん、これは明斗さん、も、照れてるな。
まさか明斗さんが照れるなんて思わなくて。
寧ろ、なんだそれ?みたいなよく意味が分からんみたいな反応が来ると思ってたのに。
こんなの、予想外。
てか、なんだこれ。
一周まわってなんか気まづいんだけど。
ど、どうしよう。
「…あっ、そう、そうだ!
あ明斗さんこうしましょう!
お互いお昼休憩ありますよね。
それでお昼ご飯、食べますよね。
それの今日のお昼ご飯の内容は何かのやり取りしましょうよ。ねっ?」
いやなんでやねん。
なんでそうなった俺。
咄嗟に思いついたのがそれって、それただの報告みたいなもんじゃん。
そんなんで話、広がるか?
あ〜、馬鹿馬鹿俺!
「それ、ただの報告会みたいなもんじゃねぇか?」
ほら見た事か!
予想通りの言葉に思わず首がガックシとなる。
うぅん、でも、1度言った言葉を簡単にないことにするのもおかしいもんなぁ。
どうしよう、な。
…あ。
「そうだ!あじゃなくて、少しずつメールのやり取りに慣れるのにとりあえずそこから始めよう!って言うその、えっと…ダメ、ですか?」
我ながらなんて名案…ていう訳でもなく、普通に苦し紛れの言い訳でしかないそれ。
穴があったら入りたいってまさに今じゃない?と思う。
でも、もうこれしか浮かばないからどうか通って欲しい。
お願い!
「っ!い、いや、何も悪くねぇ。
それで良いぜ。
確かに、武晴くんみたいになんてメール送ろうか決まらなくてずっと何もないよりかはマシだからな。」
「〜っ!あ、明斗さんの意地悪!」
「ハハッ、悪いな。
武晴くんの反応が面白くてつい、な。」
ガシガシッ
明斗さんにいつものように撫でられる。
まさか明斗さんに咄嗟の妙案のことをいじられて驚いて、ムッとなる。
でも、うぅ、ダメだ。
明斗さんに撫でられると俺、どうも落ち着いちゃう。
なんでだろう。
「も、もぉ〜…。
と、とりあえずまずはそうしてきましょうね、明斗さん。」
「あぁ、よろしくな。」
……ま、いっか。
自分がああ言ったからにはちゃんとやらないとだし。
それに、パッとしない始まりではあるけど、電車以外でもメールでのやり取りがこれからやっと出来ると思えば、こんなの可愛いものだろうから。
うん、前向きに考えよう。
「明斗さん、早速今日からやってきましょうねっ。」
「え、今日から?」
「シシッ、当たり前です。
今日決めたんだから、早速やっても全然いいじゃないですか。
それにいつやるのと言われたら、今しかないでしょ!シシッ!」
予想外だったのか小さく驚く明斗さん。
何時からとかそういう面倒臭いやり取りは抜きして、早速実行してしまおうと思った。
だって、変にまたメールがいつまでたっても出来ないなんてこと、したくないから。
1度あることは2度ある、なんてことはしたくないんだ。
だからそう、俺は早速決めたんだ。
「分かったよ。
じゃあ、今日から早速メール、しような。
でも、俺あんまメールした事ねぇから、無愛想な文しか送れねぇと思う。
だから、決して興味がないとか機嫌が悪いってのはねぇから、そこは分かって、欲しい。」
「!…シシッ、勿論です!」
明斗さんは普段の喋り方からして、予想は出来てるが問題なし!
ドンと来いです。
それに、そんなの気にしてもしょうがないし、人それぞれ書き方は違うから。
だから明斗さん、気にしなくても全然大丈夫ですからね。
『─まもなく○○駅に到着します。
揺れにご注意ください。』
あ、もう着いちゃったのか、早いなー。
つまらない時は時間なんて遅く感じるのに、楽しいの時はあっという間に経つ。
これ本当に不思議。
「武晴くん、今日も居眠りせずちゃんと授業受けるんだぞ。」
「シシッ、明斗さんこそお仕事頑張ってくださいね!」
「おう。」
でも、だからこそその短い一時はより
『ドアが開きます。ご注意ください。』
シュゥゥー!
「それじゃあ今度はお昼にメールでよろしくです!」
「あぁ、こちらこそだ。」
特別に感じるんだ。
トトッ─!
『ドアが閉まります─。』
シシッ、早速お昼の時間がたのしみだ。
最初のコメントを投稿しよう!