三駅目 手作り弁当

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三駅目 手作り弁当

─キーンコーンカーンコーン 「きりーつ!礼!ありがとうございました!」 「「ありがとうございました!」」 「はい、今日やったところちゃんと復習してくるように。」 今は丁度、4限目の授業が終わった頃。 腹の虫が鳴り今か今かとお昼を待っていた。 あと、明斗さんとのお昼のやり取りも。 「んんー!やっとお昼だぁー。」 「おうおう萩野。今日も腹の虫、元気よく鳴らしてたな。」 「う、しょうがないじゃん。 俺の身体は正直なんだから。」 「へぇへぇ、正直なことでよろしいこった。…だから、萩野の耳も正直だもんなぁ。」 「ひゃうっ!や、やめろよ柊! み、耳、弱いんだからさぁ。」 ニタニタと笑いながら俺をいじって来るのは、俺の友達、柊 和啓(ひいらぎ かずひら)だ。 こいつは俺をいじる時は本当に愉快そうにしていて、正直こちらとしては困りもの。 絶対、柊は愉快好きなドSであると思ってる。 実際、今も揶揄りつつ、俺の耳に吐息をかけるように囁くものだから。 柊のこのいじりで分かった弱点だけど、耳は俺、弱いから本当にやめて欲しい…。 「ははっ、萩野顔赤くしてやんの。」 「だぁかぁらぁあ!!」 「おーいお前ら、昼になったからって早速イチャイチャしてんなー。」 「そうだそうだ。」 「は、はぁ!違う!ちげぇし!」 「いやぁ、萩野いじるの楽しくついつい。」 「…チッ。」 あぁもうほんと、こいつめぇ。 友達だけど、こういうところだけは真面目にどうにからんかと思う。 愉快そうに笑う柊の顔を殴りたいと思うのは仕方がないことだと思う。 いや、そうに違いない。 「あ、そうだ。萩野、今日もトーカーで新しく出来た友達とやらに今日の弁当の報告するのか?」 「あぁそうだよ。」 「ははっ、反応つめてぇ。」 「誰のせいだと?」 「うん、俺だな。」 「……はぁ。」 あ"ぁー、調子狂う。 なんで俺、こいつと友達なんだろう。 思わず肩がガックリと下がった。 …なんかもう、いいや。 そう思って、俺は鞄から弁当を取りだした。 ─パシャッ 「おっ、早速送るのか。」 ポチポチ─ 〈お仕事前半戦お疲れ様です(*`・ω・)ゞ 今日の俺のお昼ご飯、こんな感じです!〉 〈画像を転送しました。〉 「…よしっ、これでいいかな。」 「あれ、無視?」 「フンッ。」 無視だ無視無視。 今は明斗さんとのやり取りに集中だ。 ピロン! 〈今日も美味そうな弁当だな〉 あっ、来た。 …シシッ 素っ気ない文面だけど、それでも返信してくれるのが嬉しくてつい頬が綻ぶ。 ポチポチ 〈シシッ、でしょ!笑〉 ピロン! 〈武晴くんが自慢してどうすんだよ〉 シシッ、確かに笑 この弁当作ったのは母さんだから、まるで俺が自分が作ったのを自慢してみたいに見えるもんな。 明斗さんのナイスツッコミ! 〈シシッ!相変わらず手厳しいですねぇ笑 あ、明斗さんの今日のお昼ご飯は何ですか?〉 さてさて、今日の明斗さんの弁当はなんだろうか。 明斗さん、食に対する関心が薄いのかだいたいコンビニの弁当が多いからな。 ピロン! 〈俺はこれだ〉 〈画像が転送されました。〉 うーん、やっぱり! 予想通りの返信に、思わずセルフボケツッコミしちゃったよ。 〈今日は三元豚弁当なんですね! じゃなくて、またコンビニ弁当じゃないですかΣ\(゚Д゚;)〉 ピロン! 〈別に俺が何食おうが勝手だろう〉 そう言われちゃ確かにそうなんだけど。 でも、それでも気になる。 確かにコンビニの弁当は美味しいよ。 現に俺も食べる時普通にあるから。 でも、それだと栄養が偏るんだ。 とはいえ、コンビニにある野菜も食べれば問題ないだろと言われちゃなんも言えなくなるけどさ。 〈ムッ、そうですけど栄養偏っちゃいますよ。せめて野菜も採らないとです。 明斗さん身体しっかりしてるけど仕事大変そうだからちゃんとしたの食べなきゃ汗〉 そう、そうだ。 明斗さんは、高身長の割に結構細いんだ。 そこが俺は気になってた。 だって、明斗さんは工場勤務だから。 初めてあってからずっと、明斗さんの格好は黒色の作業服で、なんとなくどういう職種であるかは察していた。 実際に聞いてみればそれはあってたし。 だから、偏見だけど、工場は大変だって聞くから大丈夫なのかなって、心配になったんだ。 言っちゃなんだけど、それで本当に身体が持つのかなってさ。 どうしたら─── 「はーぎーのー、無視すんなって。 寂しいだろぉー?」 ノシッ 「………あの、重いんだけど。」 そう、考えていたら、俺の無視に痺れを切らしたのか柊が俺の背中にのっしりと抱きついてきたのだ。 うん、はっきりいって邪魔だし重い。 どうしてこうも柊は不思議と距離感が近いんだ。 うぅん、分かんない。 「だって萩野が無視するから。」 「だからといって抱きつくなよ、むさ苦しい。」 「えぇ酷くない?俺、友達ぞ?」 「それとこれは別ですが?」 「ケチッ。」 「ケチで結構。」 なんかこのやり取り、友達じゃなくておおよそ恋人がやるようなものでは?? 「なぁお前らなんでそんな距離感近いわけ?」 「俺に言われても。」 「うわ、萩野の酷い。 あんなに熱い夜を何度も交わしたのに。」 「阿呆!!んなことしてないわ! 誤解を招く言い方すんな! 普通にお互いの家に寝泊まりしたって言え!」 「えぇ?笑」 「あ、そう。へぇ。 まっ、お前ら中学は違うみたいだけど小学からの仲だったもんな?」 「ほら、柊のせいで、困惑しちゃってるじゃんか。」 あーもう、本当に柊愉快犯なんだけど。 誤解しか招かない。 これ聞いてきたの、これで何人目だったっけ? 知りたくもないけど。 「そうだな。でも、大親友なのは事実だろ?」 「…もう。」 そうだろ?と言わんばかりの表情で言う柊。 それになんだか呆れるのやら、でも、そう言われるとなんだか嬉しく感じてしまう自分のチョロさに言葉を詰まらせた。 柊にいじられる所以て多分絶対これなんだろうな。 まったくしっかりしろ俺。 「まぁ、茶番はここまでにしといて。 萩野、何メール見て難しい顔してたんだ?」 「え?あ〜、柊に言う必要あるか?」 「当たり前だ。俺と萩野の仲なんだから、何かあったらこの俺こと、柊くんに相談するのが義理ってもんだろ?」 自分で言うんかいそれ。 その絶対的自信はどっから来てんだよ。 でも、まぁ、柊なら別に良いかな。 愉快犯だけど、なんやかんや言って大事な親友、だからな。 「うーん、分かったよ。 んとな、メールしてる相手、この前話した電車で体調崩した時に助けてくれた人なんだけどさ。 その、明斗さんの昼ごはんのことで気になっててさ。」 「ほぅ。具体的に何に気になってるんだ?」 「明斗さん、昼食がいつもコンビニ弁当なんだ。」 「あー、なるけどな。 萩野はいつもコンビニ弁当食べてるのが健康的に大丈夫なのかって気になってるって訳だな。」 「あぁ。別にコンビニ弁当が悪いなんてことは無いんだ。 でも、正直それだけだと栄養が偏らないのかなって。 それに明、本人は全然問題感じだけどさ、高身長の割にガリガリなんだ。 だから結構動く作業やってるだろうから身体がちゃんと持つのか、心配になるんだ。」 「おーけおーけ、つまりはどうすれば改善してくれる、または出来るかってことだな。」 「そう、そうそれ。」 柊が俺を弄る時はそれは大変だけど、こうやって悩み事とに相談事とか、いつも真剣に聞いてくれる。 それは本当にいつも助けられてて、頼りになって良い奴だと思う。 他にも友達はいるけど、自信を持って友達と、親友と言えるのは、柊なんだよな。 「そーだな……あ、そうだ。 そんな気になるなら萩野その明斗さん?って人に弁当でも作ってやったらいいんじゃないか?」 「弁当を、つく、る?」 「おう。」 「俺が?」 「そうだ。」 「………柊、天才か?」 柊のまさかのアイデアに思わず固まる。 だってそれはことわざに言うまさに、目から鱗、だったから。 思いがけないアイデアになんか変なやり取りしちゃったけど、そこは許してほしい。 それほどまでに名案だと思ったから。 「フフっ、だろ?」 「あぁ、ありがとう柊。 やっぱり柊は最高の親友だよ。」 「当たり前だ、何を今更言ってんだよ。」 「シシッ、柊のアイデア、早速明日から実行してみる。 本当にありがとうな。」 「親友の助けになったらなら本望だよ。」 ニッと口角を上げ笑みを浮かべる柊。 よしっ、柊から貰ったアイデア早速明日からやるぞっ。 明斗さん、突然の俺のサプライズ手作り弁当、驚くかな。 喜んでくれるかな。 シシッ、凄く楽しみだ。 「ちなみに、勿論俺の分の弁当も作ってくれるんだよな。」 「え?」 「は?」 柊のウザ絡み再開まであと5秒──
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