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「「あっ。」」
そう、確かにまた会えるよな、とは思ったけど、まさかこんな早くに会えるとは流石に思わなんだ。
でも、そんな再開に驚きつつも、俺は嬉しかった。
だって、明斗さんにまた会えたから。
お礼、言わなきゃ。
「あ、明斗さん、この間はありがとうございました。
明斗さんのおかげで無事家に帰れましたし、この通り元気いっぱいになりました。」
ペコリ
「そっか、それは良かった。
またああならないよう、次からは気をつけなよ。
あの時、俺がいたから良かったものの、次もあの時みたいになるとは限らないからな。」
「はい、肝に銘じます。」
まだ驚いたままの明斗さん。
俺がありがとうとお辞儀するとハッと我に返ったのか、言葉を返してきた。
言葉を返す明斗さんの顔は、硬い表情ではあるけど、微かに安心しているように見えた気がする。
あの時は気付かなかったけど、明斗さんは、あまり表情が動かないのかな。
そう、思ってたら、
「てことでじゃあn─」
「待って!…ください。」
ガシッ!
明斗さんがそそくさと別車両に移動しようとしたのだ。
それに俺は咄嗟に腕を掴む。
「…なん、だ?」
「その、良かったら連絡先教えてくれませんか?」
「は、なんで。」
「俺、お礼したいんです。
あの時間帯は本来は登校、出勤時間で、それを俺のせいで明斗さんは遅刻、したんですよね。
だから、お礼とお詫びをしたいんです。」
俺、それ関係なく明斗さんと関わりたいんだ。
これでバイバイだなんて、俺は嫌だから。
明斗さんのこと、もっと知りたいんだ。
「確かに、仕事は遅刻はしたが、そこは全然大丈夫だ。
ちゃんと上司には事前に連絡入れたし、多少給料が減るくらいどうってことねぇよ。
それに、俺はこうやって元気な姿を見せてくれたこととありがとう言ってくれただけで俺は充分、お礼されたもんだ。
だから気にすんな。」
「わっ。」
ワシャワシャ
あの時とは違う、優しく頭を撫でられた。
また撫でられるとは思わなくて驚きで声が漏れる。
それにしても、ずるいな。
そんなこと言われたら俺、何も言えないじゃんか。
薄ら見える優しい笑みさえもずるくて。
「そういうことだからさ。
詫びも礼も必要ねぇよ。
だから、武晴くんとはこれっきりd─」
「いやです!」
「─は?」
「だからいやです!
これっきりなんて俺、いやなんです。
折角こうしてまた会えたのに、呆気なく終わるなんてそんなの、寂しい…っ。」
気づけば俺は声を挙げていた。
確かにさ、俺は高校生で明斗さんは社会人で、接点なんて何にもなくて、話だって噛み合わないかもしれない。
それでも俺は、ここで終わりにしたくないんだ。
「……ははっ、そんな悲しい顔すんな。
せっかくこうして元気な姿を見せてくれたんだからさ。」
困ったような笑みをして言う明斗さん。
困らせてる自覚はある。
それでも、一度拍車のかかった俺は止められなかった。
「でもっ。」
「分かってる。……いや、分かったよ。
武晴くんの言う通り、せっかくこうしてまた会えたのは運命っちゃ運命だもんな。」
「…え?」
「武晴くん、良いよ。
こんな俺でよければ、友達になってやる。」
ある意味期待を裏切るような言葉に、思わず耳を疑いそうになる。
だから、咄嗟に聞き返してしまった。
嘘じゃないと期待して。
「ほ、本当ですか?!」
「あぁ、俺の完敗だ。」
「〜!!よっしゃ!ありがとうございます明斗さん!」
あぁ嬉しい。
あっけない手の平返しなやり取りだなと言われればそうかもしれない。
それでも、そう言ってくれた明斗さんに嬉しくならないわけなんてなかった。
本当、どうして俺はこんなにも嬉しく感じてるのか不思議に思うよ。
余りの嬉しさで思わずガッツポーズしたのと大きな声が出てしまったのは許して欲しい。
「武晴くんや、嬉しいのはわかったけど、ここ、電車中な?」
「え、あっ、すすんません!」
ペコペコッ!
ニヤリ、と少し愉快そうに口端をあげ少し笑う明斗さん。
今の状況にハッと我に返った俺は周りにすかさず謝った。
そうだ、今電車にいるのすっっかり忘れた汗
周りを見れば特に気にせずスンとしてる人もいればどこが微笑ましそうな人もいて、中にも煩いなぁと顔に出してる人もいた。
いつもこの電車使ってるから気まづくなるとか嫌だから気をつけないと。
「まぁ、とりあえず座ろうぜ?」
「そ、そうですね。」
ポスッ
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