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「「………………。」」
…恥ずかしい。
公然の目の前でやってしまった。
思わず顔を手で覆ってしまうのはどうか許して欲しい。
絶対顔真っ赤だから。
「まぁ、なんだ。これからよろしくな、武晴くん。」
「は、はい!よ、よろしくお願いします。」
「ハハッ、武晴くんは見かけによらず意外と恥ずかしがり屋なんだな。」
「ち、違っ!ただ俺は目立つのが苦手なだけで恥ずかしがり屋じゃな…いん、です。」
恥ずかしさの余韻で口がどもる。
それが明斗さん2はおかしく見えたらしくて笑い声を零し俺を茶化してきた。
それに思わず声を荒らげそうになって、でもハッと我に返る。
こんなこと、したい訳じゃないんだ。
俺は。
ガシガシッ
「明斗、さん?」
「ありがとうな。こんな俺に関わろうと思ってくれて。」
「!…当たり前です。
だって俺は、明斗さんの優しさを知ってますから。」
あの時みたいにぶっきらぼうに頭を撫でられる。
そして、明斗さんは穏やかな顔をして、感謝の言葉を言われた。
「言うほど俺は優しかねぇよ。」
「ううん、俺にとっては、明斗さんは優しい人です。
たとえ周りや明斗さん自身ががそう言えども、俺には変わらない事実です。」
「そう、か。」
「はい!」
嘘は言ってない。
明斗さんは仏頂面で人をよせつかせなさそうな顔に雰囲気を出してるけど、中身は全然違う。
体調の悪かった時、手を差し伸べてくれた明斗さんは、本当にヒーローに見えたから。
普通なら何もせず通りすがる人ばかりなのに、明斗さんだけは僕に気にかけてくれたんだ。
そんな明斗さんを、優しい人じゃないとそんなことが言えようか。
そんなの絶対ない。
俺は、明斗さんとこれからも関わり続けたい。
いっぱいお喋りしたいんだ。
だから届いて欲しい。
俺の、嘘偽りのないこの気持ち、言葉を。
『─まもなく○○駅に到着します。
揺れにご注意ください。』
「あ、もう○○駅か。」
「ここで降りるのか?」
明斗さんとの会話に時間を忘れて、アナウンスの言葉にあっという間にもう降りなければいけない駅に着くのだと気付かされる。
もう、そんなにたってたんだ。
楽しい時間は本当にあっという間だ。
話し足りないよ。
「はい。」
「そうか、道にはちゃんと気をつけるんだぞ。」
「シシッ、俺もう高校生なんですから、言われなくてもちゃんと守りますよ。
明斗さんこそ、仕事中の怪我には気をつけてくださいよ。」
「逆に言われちまったな。
俺だって言われなくてもちゃんと気をつけるさ。
ほら、駅に着くぞ。」
でも
「明斗さん。」
「なんだ、武晴くん。」
「また、会いましょうね。」
また明斗さんと会えるんだ。
「!…あぁ、また会おうな。」
『ドアが開きます。ご注意ください。』
シュゥゥー!
「シシッ、約束ですからね!」
タタッ!
だから
「約束なら、守らねぇとだな。
次、楽しみにしてるからな。」
寂しいなんてことはない。
「はい!!」
『ドアが閉まります─。』
だって、俺と明斗さんは
カダンゴトン──!
「俺も、次また電車で会えるの、楽しみだ、シシッ。」
友達だから。
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