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白い光がまぶしくてまばたきをする。目を開けるとそこは病院の待合室のような場所だった。きれいな白い壁に清潔感のあるゴミのない床。窓口と書かれた場所で女の人が受付をしている。ふかふかの長椅子には何人かが座っていた。さっきまで林の中にいたのに、すごく近代的な建物の中にいた。
顔をぐるりとまわしてみた。後ろは通ってきた記憶のない自動ドアがあって外は晴れていて普通に明るい。自分の腕が目に入った。さっきまであったはずの模様はいつのまにかきえている。触ってみても何もないし、ちゃんといつもの自分の肌だ。汗をうすくかいていたのか、ぺたぺたとした。
「こんにちは。『その間』日本支部役所へ。今日はどういったご要件でしょうか?」
立ちすくんでいると、女の人がにこりと笑って駆け寄ってきてくれた。
「こんにちは」反射的に返事をする。おねえさんは人のいい笑顔でとても普通だった。「えっと、ここには初めて来て」
「新入りさんでしたか。ここに来るまでに何か聞いていますか?」
お姉さんはわたしの静かなるパニックに気づいたのか、優しく愛想よく話しかけてくれる。
「なにも……。えっと、ここはその、どこですか?」
普通にたずねた。ここは普通じゃないはずなのに、すごく普通で、わたしも普通になってしまう。
「あら、あまり詳しくない組合人に当たったみたいですね。どうぞこちらに」
お姉さんに案内されるまま、わたしは部屋の奥のしきりの中に連れられて、お姉さんと対面で席に着いた。椅子も机も見たことがあるような普通のデザインだ。座った椅子の反発感も、机のすべすべな手触りも全部知っている。ここはどこなんだろう。きっと夢ではない。それはわかってる。
「では、国名『その間』についてお話ししましょう」
お姉さんは見たことがあるような透明のファイルを脇の棚から抜いてにっこりと笑った。
人間が住む世界とは別にファンタジーなものが住む魔界がある。決して世界と魔界がまじりあうことはないが、ごくたまに魔界の何かが人間の世界に入ってくることがある。その何かが人間に混ざると人間は人間ではなくなってしまう。その人間ではない人間っぽいものが住む国がこの『その間』である。とお姉さんは説明した。
「国?」
「えぇ、国です。ここはあなたがもともと住んでいた日本から借りてる、もしくはもらっている土地に建つ国です。この国、その間は魔界の影響を受けたものが住む国なんですよ」
「はぁ、」
限りなくファンタジーでファンタジーな場所だと思ってたのに、ここは見た目通り日本で現実的な場所だった。結局よくわからない。
「今日からあなたも、この国の国民です。まず、この国で暮らしていくために国民として住居とはたらく場所を決めてもらわなくてはいけません」
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