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第一部 19. 別れ
夏休みに入ると、あっという間に引っ越しの日がやってきた。
出発の時間、家の前に耕ちゃんや翼くん、それにクラスの友達がお別れに集まってくれた。皆、手紙やプレゼントをくれたり、声をかけてくれる。
当然ながら、美織ちゃんの姿はなかった。
「美緒、元気でな」
「美緒ちゃん、帰って来たらまた遊ぼうね」
引っ越すとはいえ、これからもお盆や年末年始、お彼岸などには帰省することになっていた。
「そうだ、これ」
耕ちゃんがポケットからピンクの可愛い封筒を取り出し、私に差し出した。
「美織から預かってきた」
封筒を受け取った私はそれを手に握ったまま、父の車の後部座席に弟と並んで座り、皆に見送られて出発した。
車の中で、私はそっとその封筒を開けてみた。
そこにはハートの模様の可愛い便せんが入っていて、美織ちゃんの綺麗な字でこう書かれていた。
――美緒ちゃんへ
いじわるしてごめんなさい。
ゆるしてください。
美緒ちゃんはわたしの大切な友だちです。
美織――
美織ちゃんとの楽しかった想い出が次々蘇ってきた。
私はただぽろぽろと泣き続けた。
「美織ちゃん」第一部 了
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