第二部 20.清火

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 警察に迎えに行った賢作さんの車で千田さんが戻ってくると、お座敷の隣の仏間に皆が集まった。美織ちゃんはまだ隣で眠っていた。  千田さんが口を開いた。 「賢作くんの調査によると、白鳳は昔このあたりに一時期住んでいた白鸞という祈祷師の息子でした。この白鸞には確かに霊能力があったのでしょう。だから、鈴江さんの霊を封じ込めることができた。しかし……」  千田さんは賢作さんが集めてきた白鳳の資料を広げた。  そこには、『驚異の霊能者』と紹介され、白鳳の霊能力を賞賛したり、面白おかしく書いた記事のコピーがあったが、日付が新しくなるにつれ、『インチキ霊能者Hに直撃!』『ハレンチ教祖が除霊と偽り信者の娘(18)に……』といったスキャンダルを批判的に紹介する内容に変わっていた。 「白鳳自身には白鸞のような力はなかったようです。それで、白鸞が残した記録を頼りに、白鸞の息子であることは隠して、力のある霊能者のふりをしたのでしょう」  鈴江さんを封じた方法が記録に残されていたので、白鳳でもそれを解くことはできたのではないかという。  東京でも、この東北でも、かつて白鸞が関わった人のことなら、相談の記録や祈祷の方法が残っていた。それらを利用して本物の祈祷師、霊能力者を演じるのは簡単だったのではないかと千田さんは言う。 「しかし、思ったほどこの地で信者が増えない白鳳は焦りを感じ、最後の賭けに出たのでしょう」
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