第二部 20.清火

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 東京では霊感商法で訴えられ、多額の示談金や賠償金を支払わなければならなかった。そのため白鳳は、この地で信者を倍増させる必要があったのだ。  まず、“ほんにょ”の呪いとそれを鎮めた自分の噂を流し、霊能力があることを示して地元の信頼を得ようとした。いずれも実際にそれを目にした人はおらず、すべてが白鳳の作り話だったのだろう。 「そして、産廃施設の場所を探していた信者と共謀し、切らずの森に災いがあるという噂を流して、地主に安く土地を手放すよう仕向けたようです」  賢作さんが説明した。  安く土地を譲り受けた暁には、その信者は多額の寄付を白鳳に納めることになっていたそうだ。 「さらに切らずの森の儀式を盛大に執り行い悪霊を鎮めたことにすれば、名声が高まり信者が増えると考えたのでしょう」  そのためには、絵になる美しい生贄を使った派手な儀式をしなければならなかった。だから、なんとしてでも美織ちゃんが必要だったのだという。 「しかし、白鳳の計画は失敗に終わった。屋敷も燃えてなくなり、名声は地に落ちました」  千田さんが言葉を引き継いだ。  警察があの場にいた信者や弟子に聞き取ったところ、出火の原因は祭壇の蝋燭が倒れたことによるもののようだ。  ただ、証言の中には、白鳳が宙に向かって「やめろ……。うるさい、鈴を鳴らすな」と叫び、「頭が痛い。うるさいから止めてくれ」と耳を塞いで逃げ回り、自ら蝋燭を倒したという目撃談もあったという。
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