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「鈴の音?」
私がつぶやくと父が、「不思議だったんだ。ねえ、泰三さん」と美織ちゃんのお父さんに同意を求め、お父さんも肯く。
父と美織ちゃんのお父さんは、絹子おばさんと白鳳が逃げ遅れているのを発見して助けたが、火の勢いがひどくて表玄関には戻れなかった。
すると、どこからか鈴の音が聞こえ、その鈴に従って裏の方へ進んで行くと、消火活動中の消防隊に出会い、助けられたのだという。
「鈴江さんが、助けてくれたんだよ!」
私が美織ちゃんと逃げたときに同じような体験をしたことを語ると、絹子おばさんは手で顔を覆い、「ああ……お姉ちゃん……」と言って泣き崩れた。
「あれだけ大勢の人がいて、あれだけの火事だったのに、犠牲者がひとりも出なかったことは奇跡だと警察で言われたよ」
千田さんが言った。
「切らずの森の地主は、千田さんの話に納得して、これからもあの森を守り続けていくと約束してくれました」
賢作さんが話を締めくくった。
話が終わり、千田さんと賢作さんは帰って行った。
絹子おばさんは美織ちゃんと、美織ちゃんのお父さんとお座敷で休むことになった。遠慮するお父さんに、絹子おばさんが強く希望したのだ。
元夫婦は十何年かぶりに、美織ちゃんを囲んで川の字になって休んだ。
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