第二部 20.清火

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 あとで美織ちゃんが教えてくれたのだけど、二人が自分の寝顔を見ながら思い出話を語るのを、途中で目が覚めた美織ちゃんは寝たふりをしたまま聞いていたのだそうだ。 「美緒ちゃん、私、とっても嬉しかたったの! あんなに優しいお母さんの声、私、久しぶりに聞いたのよ。でもね……」  美織ちゃんは困ったように、恥ずかしそうに告白した。 「目を開けてお父さんの顔を見たい気持ちを我慢するのが、すごく大変だったの」  私は笑って肯いた。 「美織ちゃんのお父さん、日に焼けててかっこいいよね! うちのお父さんと大違い」  うちの父は最近、ビールの飲み過ぎでお腹が出てきていたけど、漁師をしている美織ちゃんのお父さんはスポーツマンみたいだった。 「そんなことないよ!」と否定しながらも、美織ちゃんはとても嬉しそうだった。
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