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「バイバイ、美緒ちゃん!」
「バイバイ、美織ちゃん!」
私も、歩きながら振り返って応えた。
「バイバイ、またね! 美緒ちゃん!」
「バイバイ、またね! 美織ちゃん!」
お互い、相手の姿が小さくなるまで、それを何度も何度も繰り返した。
それはまるで、小さな子供が仲良しの友達と別れるのが名残惜しくて、ずっとずっと振り返っては手を降り続けるのと同じだった。
「ただいま――」
心踊るような気持ちで家に帰ると、母は台所にいて、起き上がって座椅子に座れるようになった祖母はお茶の間でテレビを見ていた。
ご機嫌な私が鼻歌なんか歌っちゃったもんだから、台所にいた母はすぐに気づいた。
「まあ、美緒、何かいいことあったの?」
「美織ちゃんに会った! また一から友達になった」
私の嬉しさが伝わったんだろう。母は微笑んだ。
「じゃあ、来年の春には」
「うん!ここに戻りたい!」
それから、隣の部屋で私たちの会話を聞いていた祖母のところへ行った。
「おばあちゃん、ずっと一人にしてごめんね! 来年には皆で帰ってくるからね」
「そりゃ帰って来てくれるのは嬉しいども、大丈夫なのかい?」
祖母が美織ちゃんとの関係を心配しているのはわかっていた。
「うん。もう弱虫の美緒じゃないから、大丈夫だよ!」
「まあな、絹子も美織も、お前達がいなぐなってから随分変わったからね。でもね、美緒、ひとつだげ約束して……」
「美織ちゃんの家には行かないよ」
おばあちゃんに最後まで言わせずに答えると、おばあちゃんは「まいったね」と言い、二人で笑った。
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