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四月になり、私の高校の入学式と弟の隆平の中学の入学式も終わり、新学期が始まった。
私はバスケ部に入り、勉強に部活に忙しかったが、美織ちゃんとは毎日ではないけれど待ち合わせて一緒に帰ったり、図書館へ寄ったりしていた。
私は自転車通学、美織ちゃんは電車通学だったので、待ち合わせは駅前になることが多かった。
離れていた間の時間を取り戻すように、私たちはいろいろな話をした。
そして、ある時、美織ちゃんのお父さんの話になった。
私たちが引っ越したあとの話だ。
ある日、美織ちゃんが家に帰ると、絹子おばさんが慌てて読んでいた手紙を隠したのに気づいたそうだ。
それが妙に引っかかって、絹子おばさんが留守のときにこっそりおばさんの部屋でその手紙を探した美織ちゃんは、和ダンスの引き出しの奥から束になった手紙を見つけたという。
手紙の主は、菊池泰三とあった。
「その手紙は、私のお父さんからだったの!」
美織ちゃんは目を輝かせて言った。
美織ちゃんは絹子おばさんから、お父さんは自分たちを捨てて出て行った、そして死んでしまっと聞いていた。本当なら美緒ちゃんのお父さんがお婿さんになるはずだったとも。だから美織ちゃんは私にあんな意地悪をしたのだ。
けれどもその手紙を読んでみてわかったのは、お父さんは美織ちゃんと絹子おばさんを捨てたわけじゃないということだった。
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