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美織ちゃんのお父さんは、当時はまだ元気だったおじいちゃんーー絹子おばさんのお父さんーーとうまく行かず口論になり、絹子おばさんも味方になってくれないので、冷静になるために一時的に隣の市にある自分の実家に帰ったのだそうだ。
すると間もなくおじいちゃんから離婚届が送られて来て、話し合いもできないまま別れることになってしまったらしい。
「お父さんは毎年、私の誕生日の頃に手紙を送ってきてくれていたの。お父さんは今でも私に会いたいと言ってくれていて、そして母とも話したいと言っているの」
美織ちゃんは、少し戸惑ったような、でも嬉しそうな様子だった。
「お父さんはね、あの頃の自分は弱かったから、強くなるために今は富山県で漁師さんになって頑張ってるんだって。それを読んだら、やっぱり私のお父さんは、富山にいるお父さんだけなんだなと思えたの」
美織ちゃんは照れたように笑った。
そういえば私は前に父から、北陸にいる美織ちゃんのお父さんに美織ちゃんたちの様子を知らせているお礼に、暮れに蟹が届くんだと聞いたことがあった。
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