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第一部 6. 冬の夜の集まり
ある冬の晩のことだった。
父と母と弟の隆平は留守で、私は祖母と二人きりで留守番をしていた。
母の父、つまり仙台の祖父が自宅で倒れて救急車で運ばれ、父と母は幼い弟だけ連れて昨日から仙台へ行っていた。
命に別状はなかったが、祖母が気落ちしているのであと一泊してから帰ると連絡があった。
「美緒、夕飯食ったら出かけっぞ」
祖母に言われた。
これまでも祖母は夕飯のあと、一人で出かけることがたまにあった。
どこへ何しに行っているのか私はわからなかったが、父が気付くと、「年寄りには本当に困ったもんだな」と母に話していたので、行き先はあまりいい場所でないということは察していた。
夕飯を終えると、防寒着に身を包み、スノーブーツを履いた私は、祖母に手を引かれて外に出た。
外は雪がしんしんと降っていた。
どこへ行くのかと不安に思いながら雪の中を歩いて向かった先は、このあたりの地区の寄り合いに使われる平屋の大きな集会場だったので、私は拍子抜けした。
私と同じくらいの年齢の子供たちが親や祖父母に手を引かれ、暗い夜道を方々から集まって来ていた。
集会場に上がると付き添った保護者に防寒着を預けて、子供だけ広い座敷に通された。
その座敷は雨戸が閉められ、電灯は点いておらず、明かりは部屋の四方に置かれた燭台のろうそくと、前後に置かれた大きな石油ストーブの炎だけだった。
薄明かりに目を凝らすと、二十人ほどの子供たちが同じ方向を向いて座布団の上に座っていた。
その中に、同じクラスで隣の集落の耕ちゃんや翼くん、それにうちの近所の小学二年生の男の子の顔があったので安心した。
「美緒ちゃん、こっちこっち」
前の方から美織ちゃんの声がして、前から二番目の列に座っていた美織ちゃんが手招きしてくれているのに気付いた。
美織ちゃんが取っておいてくれたのだろう、左隣の座布団が空いていたので、急いで行ってそこに座った。
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