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序章
親の記憶が、一也にはほとんどない。
気がついたら、「安らぎの家」という養護施設に入れられていて、そこで暮らすのが当たり前になっていた。
自分の両親がどんな人なのか、施設ではいくら聞いても教えてもらえず、それでも、施設の子であることは、施設育ちではない普通の子供たちには格好のいじめの芽でしかなくて、よくいじめられて泣いた。そのたびに思った。
本当の両親に会いたいと。
思いは募るばかりで、それでも叶うことはなくて。ただいつも地面ばかり睨んでいたような気がしていた、そんな頃。
木下一也は、名取秋野、というその人に出会った。
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