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(キノコ?)  その物体を目にしたとき、おれがまず思ったのは、そういうことだった。  キノコ。  それも、人間の背たけほどあるキノコ。  あるいは、キノコのようなもの。  それが、部屋のまん中に、ボンと立っているのだ。 「それっ」  かけ声とともに、後ろから突きとばされた。  両手を後ろでしばられている。バランスを失って前につんのめり、ひざをついた。 「くそっ」  にらみつけるために、後ろをふり向く。  白い修道服を着た五人の男たちが、部屋の入口付近に立っていた。  おれがにらみつけても、誰も意に介さない。皆、冷酷な目でおれを見おろすばかりだ。  それ以上にらんでいてもしようがない。それは舌打ちして、再び前方に注意を向けた。  いまおれが連れてこられたのは、五、六メートル四方の、けっこう広い部屋だった。表面に白い樹脂を貼ったパネルで、前後左右と天井を囲ってある。床には土が敷き詰められている。  で、部屋のまん中に、さっき言った「キノコのようなもの」が立っているのだった。  太い一本足に、おかっぱ頭が乗っかったような形をしている。というより、キノコを模した有名なチョコレート菓子を、そのまま人間サイズにまで拡大したような形、と言ったほうが、わかりやすいかもしれない。  ただし、色はお菓子とは全然違う。  傘というか、おかっぱ頭というか、そこは鮮やかなピンク色だ。蛍光ペンのようなピンク色が、天井のLED照明の光を受けて、光っている。  足は、蛍光ペンのような鮮やかな緑色だ。  全体の色彩が色彩なので、ぜんぜんキノコらしくない。植物という感じもしない。鮮やかな色を塗った、キノコのモニュメントといった印象だった。  不思議なことに、きれいな色あいなのに、不気味な感じ、というか、嫌な感じがする。理由はよくわからない。もしかすると、部屋全体にたちこめた、この変に甘ったるい匂いのせいかもしれない。
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