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と、そのときだ。
後ろにいた男たちが、緊張する気配があった。
おれは再び後ろをふりむいた。
男たちも、後ろの、出入り口のほうをふりむいていた。
さっきおれがくぐらされたドアから、奇妙な男が入ってきた。
着ているのは、ほかの者たちと同様の、白い修道服だ。年のころは四十前後。やり手の経営者を思わせる、油断のならない顔つきをしている。
それはそれとして、奇妙なのは、その男が歩行器に頼って歩いていたこと。そして、歩行器を押す手が、両手とも作り物の、金属製の義手だったことだ。
歩行器の男に続いて、これも白い修道服を着た男が入ってきた。三十前後の、やせた男だ。おどおどした様子だ。
歩行器の男は、キノコのほうへと進んでいった。そばまで行って、立ち止まると、ふり返った。
――さあ、どうぞ。
声には出さないが、そんなそぶりで、ついてきた男をうながした。
やせた男は、一瞬ためらったようだった。が、すぐにうなずくと、キノコの前に歩みでた。
すると、キノコの傘のまん中に、一本の横線が入った。かと思うと、ぱっくりと上下に割れた。まるで巨大な口のようだ。蛍光ピンクの傘のなかは、毒々しい赤い色だった。ぱっくりと割れた「口」の上下を、薄い赤色の、何本もの粘っこい糸がつないでいる。それは納豆のネバネバを連想させた。
その上、匂いだ。
さっきまで部屋のなかに充満していた、気色悪い、甘ったるい匂い。それを何十倍にも増幅したような、強烈な匂いが、むおっと「口」から吐き出されていた。
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