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「ううっ」  たまらん。  おれは思わず顔をそむけた。本当は、鼻と口を手でおおいたいところだ。だが、両手を後ろで縛られているので、できなかった。  ちらりとまわりの男たちを見たが、誰も動揺していなかった。しかめっ面をしたり、顔をそむけたりする者はいない。それどころか、みな目をらんらんと輝かせ、キノコに見入っているではないか。  やせた男が、動きを見せた。キノコの「口」のなかへ、おずおずと左手を差しこんでいったのだ。  男の腕が、手首とひじの中間くらいまで入ったとき――。  突然、ぱっくんとキノコの「口」が閉じた。 「あうううっ……」  左手をキノコに噛まれた状態で、やせた男が、情けない声をあげる。 (リンチ?)  そんな言葉が頭に浮かんだ。  仲間内のルールを破ったか、なにかの罪を犯したために、手をキノコに食わせる罰を与えられた。そう思った。  だが――。  手を噛まれたまま、はううう、と、もだえる男の様子を見ていると、おれの思い違いのようだった。  男は決して手を引き抜こうとはしていなかった。ただ、全身をくねらせている。天井を仰ぎ、頭をぐるぐると回す。首も、肩も、腰も、波打つようにくねらせる。ハアハア、と息を荒くついている。  見ているうちに、理解した。  男は快楽にもだえているのだった。あたかもセックスをしているかのようにあえぎながら。
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