速報ニュース

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速報ニュース

「速報です。  数年前から地球に接近していた隕石を破壊するため、巨大な水素爆弾を積んだロケットが地球を出発して3日、その最終段階が先ほど実行されました。  ロケットは隕石まで到達し、無事ミサイルを発射。見事に隕石を破壊したとの情報が、たった今入りました」  テレビのキャスターが、興奮気味に速報ニュースを告げた。 「数日は隕石の欠片が地球に落ちてくる可能性があり、現在その地域を特定する作業が急ピッチで進められています。  しかし、ひとまず地球は助かりました!」  そのニュースが街頭に流れるや否や、人類は皆、手を叩いて喜んだと言う。ある者は仲間と肩を叩き合い、ある者とは家族を抱きしめて。  数日後、小さな隕石の欠片が太平洋と南アメリカの一部に落ちたことが確認された。幸い人のいない箇所に落ちたとのことで、人類は一命を取り止めた。  そして各国で、尊い1名の若者を追悼する式典が催された。名前は公表されなかったが、30代の日本人男性だと言う。  世界は彼を讃え、彼の勇気に敬意を払った。もちろん、日本でも式典が大々的に営まれた。設営された献花台には各地から多くの花が捧げられ、連日多くの人が彼の行動に感謝した。  世界は彼を尊びながら、生き残った命を歓んだ。
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