11人が本棚に入れています
本棚に追加
「ご愁傷さまでした」
その医師は淡々と言った。そして静かに白い布を祖母の顔に被せ、一礼して部屋を出ていった。
享年104歳。大往生も大往生だ。ここ10年は、こちらの施設にお世話になり、今日息を引き取った。
死因は老衰による呼吸不全。つまり、ばあちゃんはしっかりと、その天寿を全うした訳だ。
悲しくはあったが、涙は出なかった。「本当にご苦労さま」そう言って、ばあちゃんの手に、自分の手を重ねた。まだほんのり温かかった。
俺の両親は70を過ぎて他界。孫の俺が祖母の保証人になっていた。と言っても、ここ数年、俺のことも覚えちゃいなかったようだけど。
不謹慎だけど、正直、肩の荷が下りた気がした。これで誰にも心配をかけることなく、俺は俺の人生を歩んでいける。
死への旅路へと出掛けられるという訳だ。
最初のコメントを投稿しよう!