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あるところに、あくどい方法で金儲けをしている魔法使いが召使いの少年と一緒に住んでいた。
彼は家の中に大きな宝箱を置いて、そこに貯めこんだ財宝を隠している。
キラキラ輝く宝石や金貨を毎晩眺めてから眠るのが、彼の唯一の楽しみなのだ。
しかし、その噂を聞きつけた泥棒が夜ごと忍び込んでくるのには困った。
眠っている間に盗まれたことは一度や二度ではない。
ある日、魔法使いは大規模な盗賊団が我が家を狙っているという情報を耳にした。
もし大勢で来られたら、財宝を根こそぎ奪われてしまうに違いない。
そうなることを恐れた彼はいいことを思いついた。
「よし、泥棒たちを罠にはめてやろう。宝箱に触れると、小さなネズミになってしまう魔法をかけるのだ」
「それだと、ご主人様が宝箱に触ったらネズミになってしまうのではないですか?」
共に暮らしている召使いの少年が問うのに対し、魔法使いは鼻先で笑った。
「ふん、俺様のような天才がそんな初歩的なミスをするわけがない。当然、俺様は魔法にかからないようにしてあるさ」
魔法使いは宝箱の前で呪文を唱え、安心して眠りについた。
翌日。
宝箱を確認した魔法使いは仰天した。
底に穴があいていて、そこから金貨が零れ落ちていたのだ。
どうやらネズミにされた盗賊団が、宝箱をかじって穴をあけてそこから財宝を運び出したらしい。
「なんてこった。真珠のネックレスや、ダイヤの指輪、穴を通るサイズの物は全部もっていかれてしまった!」
「ご主人様、元気をだしてください。まだ財宝は半分以上残ってます」
ショックを受けた魔法使いだったが、召使いの声に気を取り直して、また宝箱に魔法をかけることにした。
「今度はどうするんですか?」
「そうだなぁ、ネズミじゃなければいい。何がいいだろうか……そうだ、オマエの好きな動物に変身するようにしてやろう。犬でも猫でも何でもいいぞ」
そう言って呪文を唱えて、魔法使いは自分の部屋に戻って行く。
残された召使いは、自分の好きな動物について考えていた。
そして皆が寝静まった頃。
ぱお~ん! ぱお~ん!
月明かりの下、大きな象の群れが魔法使いの家の壁を破壊して逃げていった。
その長い鼻にたくさんの財宝を掲げて。
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