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「それじゃ、お母さんはそこのドッグランでポチを遊ばせておくから、何かあったらすぐに呼ぶのよ。」
そう言って息子には私から離れすぎず声が聞こえるくらいの距離で遊んでもらうことにした。とは言っても、息子は普段から私より同い年くらいの子供と遊んでいる。いつの間に仲良くなったのか、外に遊びに行く度に見知らぬ子供を連れてきて「友達できたー。」と言って紹介された。だから、今日も新しい公園で新しい友達でも作って遊ぶだろうと思っていた。
空いている時間帯を調べた甲斐もあって、ドッグランには私以外の利用者が誰もいなかった。初めてで勝手知らない場所だったから、経験者に気をつかわず利用できるのはありがたい。
ポチも初めてのドッグランで興奮しているのか、普段の倍以上の力でリードを引っ張る。ポチは飼い始めた頃から元気で、歳をとってもその元気は衰えることを知らなかった。ただ、元気すぎるのも困りもので、私がポチのリードをうっかり離してしまった時、一匹で勝手に走り去ってしまったことがある。その時はいつもの公園で待機してくれていたから良かったものの、そんな経験をしてから私はポチのリードを何重にも手に巻き付けて離れないようにしている。今日も私の片手はポチのリードを握るために使われているせいで、ポチが強い力で引っ張ると結構痛い。ポチを一旦落ち着かせないとと思い、私はポチに「ポチ。」と名前を叫ぶ。
そうして、ポチに気を取られた一瞬、私は完全に息子から目を離してしまった。
「お母さん、来て―。」
息子の声が遠くから聞こえる、さっきまで目の届くところにいたはずなのに。私は嫌な予感がして、ポチを連れて直ぐに声のする方へ向かった。
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