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幸いなことに、息子は五体満足で大きな木の下にいた。
「どうしたの?」
私は息子の目線まで屈んで聞く。
「あれ見て―、木登り。」
息子は楽しそうに木の上を指さして言う。私は息子の指が指す方へ目線を動かす。その先には確かに木に登る子供がいた。
「あのね、一緒に遊んでたらね、木登りを始めて、あんなに高い所まで行ったんだよ。凄いよねー。」
息子は自分の興奮した気持ちを訴えかけるように私の手を掴んでピョンピョンと飛び跳ねる。私はサーっと血の気が引く思いで、どうしようかと木の上の子供から目を離さずに立ち上がった。子供は大人の私が来ても気にせず木登りを続ける。近くに子供を掴んで降ろせるような屈強で大きな人がいないか見渡したが、そう都合よく見つかる訳はない。そんなことしているうちに、子供はどんどん上へ登っていく。
「危ないよー、降りておいで―。」
下手に刺激すると落っこちてしまうかも知れないと思い、私は叫ばず出来る限り落ち着いた声で呼びかけた。飛び跳ねていた息子は私の様子を見て今の状況の危うさを感じとったのか、私の手にギュッと抱きついて見守りだした。
それでも、子供の木登りは進み、明らかに子供の体重では折れてしまいそうな枝にまで進みだした。
バキッ
「あっ。」
息子が声を漏らす。
子供が乗っていた枝が折れ、重力に従って自由落下してくる。
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