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そして、今に至る。
片方の手はポチに繋がるリードで引っ張られ、もう片方の手は息子に握られて離せない。
落ちてきた子供の手が、とうとう私の顔面に触れる。
万事休す。
衝突が避けられないことがハッキリしたその瞬間、私は何とか後ろにのけぞって少しでもクッションになることに全力を尽くす。さながらサッカー選手のトラップのように落ちてくる子供の勢いをころす。と、そんな都合の良いことを考えても、ただの専業主婦の私に繊細なコントロールが出来るわけもなく、バランスを崩して思いっきり尻餅をついた。ドンと大きな音がしてジーンとお尻が痛む。
「いててて。」
私は痛む箇所をさする。
「お母さん、大丈夫?あのね、こける時はね、先に手をついて方が怪我しなくていいんだよ。」
私が先日、息子が怪我した時に注意したことを覚えていたのだろう。それでも心配してくれる息子に私は「大丈夫よ、ありがとう、その通りね。」と少し呆れた顔で笑って言った。
ところで、件の子供はというと、私とは打って変わって無事だった。
木に登っていたのが猫の子供だったから、なんとか私の顔面でも怪我はなかったみたい。私を踏み台にして、尻餅をついた私から「ニャー。」と鳴いてどこかへ行ってしまった。
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