空から子供が落ちてくる

　あなたは時間感覚の延長って体験したことはある？
　一流のスポーツ選手が集中状態にあるときに人や物の動きが止まって見えるっていうあれ。
　私は今まさに、それを体感している。
　専業主婦になって運動なんか学生のころから触れてもいない、この前は息子にも駆けっこで負けた。そんな運動音痴の私が、一流のスポーツ選手と同じ感覚を得る。それほどまでに危機的な状況。
　空から子供が落ちてくる。
　両手は塞がり、避けることも出来ず、このままだと私の顔面に落下する。直撃まであとコンマ何秒か、どうすれば私も子供も怪我せずに事を済ませられるか。頭を回せど答えは出ず、引き伸ばされた時間感覚が走馬灯のように私を振り返えらせる。
　今日はたまたま息子と新しい公園に遊びに来ただけだったのに。

　私は晴れた日には、もうすぐ小学生になる息子と９年前から飼っている犬のポチを連れて公園へ出かける。犬を飼いだしてから公園を散歩することが私の日課だった。それは息子が生まれてからも変わらず、なんなら息子を連れて一緒に犬の散歩をするようになった。ただ幸運なことに、息子は内より外で遊ぶことが好きなようで、息子が幼稚園に入ってからは積極的に付いてくるようになった。今や、犬の散歩をに来ているのか、息子の遊びに連れてきているのか分からないくらいだ。
　普段は家の近くの野球をするには少し小さい公園に行くのだが、今日は違った。数日前、犬の散歩仲間でもあるママ友に隣町にある大きな公園の話を聞いたのだ。ママ友が言うには運動場くらいの土地があって遊具も一式そろっている、さらには公園内にドッグランがあるらしい。興味を持ったら確かめないと気が済まない性格な私は、その場で公園の正確な場所とドッグランに人の少ない時間帯を調べた。