ファーストキスが盗まれた

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「で、何があったの?」  養護教員の福田和子(ふくだかずこ)、通称福子(ふくこ)先生が、四人を見回すようにしながら足を組み替える。短いスカートの奥が、見えそうで見えないギリギリのところでの足の組み替えは、年頃の女子高生四人にとってもドキッとする仕草だろうな。 「さっきも話したぞ」 「だから、盗まれたんだってば」 「レモン味じゃないのはなぜですか?」 「盗難というより強盗だよ」  四人は口々に福子先生に訴えかける。いつ練習してるのと訊きたくなるくらい息ピッタリ。聖徳太子でも聞き取れないんじゃないだろうか。 「みんなで一斉に喋らないで。起きた事実はなに?」 「キスが盗まれたの。泥棒されたんだよ」  仁夜(にや)の回答に、福子先生は顔を近づけるように少し前のめりになった。いつも胸元が広く開いた服を着ている福子先生の谷間に、四人の意識はどうしても向いてしまうようだ。 「キス?」 「そう。キスを盗まれたんだよ」 「はい? 何だって?」 「だから、(あおい)のファーストキスが盗まれたの」  碧ちゃんのファーストキスが盗まれたという事実に、さすがの福子先生も一瞬固まっている。碧ちゃんは、このクラスでも美人でスタイルも良くって、男子にも女子にも人気があるけれど、ファーストキスって、そんなに大事なものなのかな。
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