第一話

1/2
前へ
/4ページ
次へ

第一話

 帰り道、スマホの音に取り出した。  暗闇にスマホの灯りが浮き出る。  彼からにいそいそと開くと書かれたメッセージを二度見、いや、三度見した。    ごめん、君とはもうやっていけない。    さよなら。  スマホに残された文字に動けなくて。  慌てて彼に電話しても通じない。  捨てられた?  え?ちょっと待って?どういうこと?  一方的な彼からのメッセージは、昨日まで何もなかったはずなのにと、一年付き合った彼からの…。  ブーンとその音の顔をあげた。  車が走ってくる。  見慣れた車は、フォルムがかわいいと一緒に選んだ軽自動車。  思わずその前に両手を広げて出た。 パパ―ン! キーッ!という急ブレーキ。 「あぶねーだろ!」 「あぶねーじゃねぇ!どういうこと!」  車を運転していたのは元カレ笑いながら、お前じゃつまんねーんだよと言いやがった。  はあ? 「ねえ、何してるの?」  横にいた女。知らない女、派手。 「はあー?」 「じゃあな、俺よりいい男なんていないだろうけど、探してみろよな」 「何それ!うっせー!」 「口うるさい女なんか願い下げなんだよ!」  男は私が伸ばした手を払うと、もっと女を磨けといいやがった。 「なんだと、この車の頭金かえせ!」  走りだした車。 「バカヤローしねー!」  大声で怒鳴っていた。  そして注がれる目と周りにいた車。  急に恥ずかしくなった。  パパ―ン!  車が通り過ぎる。  このままひかれてもいいかと思うほどの脱力で、気が付けばガードレールの車道側に立っていた。  ここを超えて来たのか?  切れ目がないガードレールは、こっちに来るなと言っているようで、あまり人通りのない場所だけど、通る人はいる訳で。  可愛そうといいながらくすくす笑う女たち。  しかたがないとガードレールをまたぎ、そばにあった植え込みのそばに座り込んだ。  もう、なんなのよ! ガサッ!  その音にびっくりして振り返った。  スリッパ?  するとキャーという女性の悲鳴に上を見上げた。 「た、助けてー!」  男性が、ベランダにしがみついてる?  集まる人たち、泥棒かと言っているが、また落ちてきたのはもう片方のスリッパ?  助けてーと腕が伸び切って、足をばたつかせているから、落ちるのは時間の問題。 「落ち着いて、右に足をかけられますよ?」  右?右という男性は、そこへ足をおくと動き出した。 「そのまま、でっぱりに足をかければ」  は、はいという声がする。  周りの人も何事かと出てきた。  懐中電灯をもってきて明かりを向けてくれる人、男性は、私の指示を聞きながら下へと降りてきた。 「すみません!ありがとうございます!」 とあちこちにペコペコ頭を下げる男性。  なんだかうちの会社にいる上司みたいな人だな?  なんて見ながらも、さて帰ろう。 「あ、あのー?」  髪をかきあげた男性。だいぶ年上のように見えた。ワイシャツにスラックス姿。  私の所にくると、大丈夫ですかと聞いてきた。  あ?さっきのか?  ハイと答えた。 「そうですかそれならよかった」  すると猫の声が聞こえた。 あたりを見回した。どこにいるのかな? 「どうかしました?」 「猫の声が」 すると彼、うわーと言って、シロ、シロ、と言って植え込みの中を見たんです。  私は、スリッパがその辺に落ちてきたというと、彼はありましたといい、もう一つもその辺にというと。 「いたー!こらー!」 子猫を引っ張り出した。 もうといいながら彼は、私の喧嘩の様子を見ていたら、この子が飛び降りて、その反動で自分まで落ちちゃって、と言いながら、片方のスリッパと猫を抱いてきた。  其れじゃあと私はそこから行こうとした。 「あ、あの」  はい?  その方は、私に頭を下げた。 「ぶしつけなお願いとは存じますが、部屋に戻れません、お願いしたいのですが」 オートロック、一応管理局に連絡をしたら、二時間ほどかかるというので、それならというので試すことにした。彼はお隣の住人に頼み外から部屋へはいろうとしている。 「すみません、ありがとうございます」そう言って彼はお隣の部屋へ入っていった。 「白ちゃん、だめよ?」 ニャー。 私の腕の中には預かった子猫。まあ可愛いし、なく猫を撫でていた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加