第二話

1/2
前へ
/4ページ
次へ

第二話

其れから一週間、私は仕事に打ち込んだ。 私はクリーナーハウスという企業向けのメンテナンスサービスや掃除をしている会社の営業。たまに手伝いもするがほとんどが外回りだ。 そして特殊なことをしている。 ゴンゴンゴン。 目の前で、窓を叩く人。 両手を合わせ、この間はありがとうと口が動いている。 スーツ姿で、眼鏡をかけているのは下田さん、結構いい男。 そう、私はビルの窓拭きをしているのだ。 ゴンドラのあるようなところではなく、低下層のビルの窓拭き。安全具をつけて宙吊りになっている。 この会社は半年に一度、後はビルの中の掃除をしているが私ではない人だ。 シュッと洗剤を吹き付けると、猫の絵を描いた。 両手をあげ元気と言っているようだ。そのそばに女性社員だろうか?来て私の絵を見ている。すぐに消した。 彼に何か言っているようだ。 頭に手を置いて、なんだか困ってる。 「サトー下」 「はい」 私は、小さく手を振った。 彼も気が付いてようで手を振ろうとして、女性を押した。すると窓に近づいてきて、手がものを食べる格好になった。指で八、暖簾をくぐる格好にうなずいた。 そして先に店で待っていた。 「悪い、遅くなった」 それほどじゃない。スーツ姿のかっこいい人が目の前に座った。 何か頼んだ? 焼き鳥と、今日のおすすめのお魚を頼んだ。 そう、じゃあえーと、生と子芋を煮たの。 店員さんはいつもありがとうと言っている、あれからほとんど毎日来ているそうだ。 すごい常連じゃないですか? ここのはおいしくてというと、カウンターの中からありがとうと言う声。 定食もいいですよねと言うと一人の時は日替わりだという。 ビールが来た。 それではお疲れ様、乾杯。 うまい。 美味しい。 仕事の話と猫の話。おいしい料理の話で盛り上がる。そしてお店も数件おしえた、こんなそばにスーパーがあったのかという彼は、今度はここへ行こうなんて言っていた。 「そっかー、三十かー、ごめんな、こんな叔父さんで」 いえ、いえ、まだ四十二、一回りなんて同じですよというと、会社じゃ肩身が狭いよと言われた。 そういえば女性社員に何か言われてましたね? まあいろいろとな。 私は、下田さんに出会えて吹っ切れた話をさせてもらった、ありがとうございましたと頭を下げた。 すると下田さんはなんともいえない顔になり、頭をかき始めた。 「実はさ」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加