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男が、全速力の私の横について進めるようになるころに、「あの世」と人が言うなかの一つの場所、あの世に作られたディズニーランドにたどり着いた。
入場ゲートをくぐると、そこは魂で溢れかえっている。家族で歩いている者も多いが、よく見ると、大人一人で、早足に歩き回っている者も少なくない。先に着いているはずの誰かを探し続けているのだ。
その中に、以前に案内した母親も見つけた。ポップコーンのバケツを下げて、子どもを探して歩いている。
私は園の奥までは入っていけない。ゲートを入ってすぐのところで男と別れ、行き交う人を見つめ、彼の姿が無いことを確認して私はランドを後にした。
私はいつも係留中のタンカーの下に潜り込んで、崖の方をのぞいている。
崖から人が落ちてもわかるし、タンカーから人が落ちても分かる。
私がイルカあるいは人魚になってから、タンカーから人が落ちたことはない。それでも人がタンカーから落ちることがあることを知っている私は、いつか落ちることを願うようにしてそこに居続けている。
波が荒れていた。意外なものでこんな日に崖からわざわざ落ちようという人は少なくて、代わりに夜釣りの事故が増える。
ほらひとつ、ライトが波に引きずり込まれる。
私は案内しか出来ないので、魂が肉体に繋がっていられるかどうかを近よって確認することにする。光のほうへ向かっていくと、白い波を泡立てて紺色のウインドブレーカーの腕が海面から飛び出したり引っ込んだりしているのが見える。
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