やっぱりそうでしょうね 【完】

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やっぱりそうでしょうね 【完】

僕が満月を眺めると馬に一晩変身するなったと聞きつけた第二王子が、いそいそと僕を王宮に呼びつけた。 「ハルマ、お前は先日の満月の夜に、人間から馬に舞い戻ったらしいね。一体どうしたというのかな?まだ呪いが掛かっているのだろうか。」 僕はあの夜から、一人考えていた事を王子に話すことにした。 「殿下、私の元の世界には狼男という伝説があるのです。満月の夜、男が満月を見つめていると、その身体は1匹の狼になってしまうという伝説です。 私の身に起きたことはまさにそれの馬仕様の様です。美しい満月に魅入られて、私は馬のフォルになってしまいました。けれども、朝日が昇るのと同時に人間に変幻したのです。」 王子は僕の話を興味深く聞きながら、ニヤリと笑って言った。 「なるほど。では、私にもその変幻を見せてくれ。ははは、満月の夜にだけ馬の走りを楽しめるとは、月の悪戯にしては趣きがあるね。そうは思わないか?」 僕は王子にゲンナリとした顔を思わず見せてしまった。絶対王子はそう言い出すに違いないと思っていたからだ。 「私は、もう一度それをやるには少し勇気がありませんが。もし戻れなかったらと思うと…。」 すると王子が目を光らせて言った。 「大丈夫だ。現にハルマはこの世界の人間として残れただろう?全くハルマは異世界の特別な贈り物だ。面白さだけでなく、実際に有益な情報もくれるのだからな?何か褒美に欲しいものはあるか?」 僕は側に居るウィルの顔をチラッと見て、思い切って言った。 「殿下、ひとつだけお願いしても宜しいでしょうか。私は現在事務方の宿舎に部屋がございますが、騎士団の官舎へ住まいを移したいと願っているのです。 夜番の騎士たちの目を盗んで、事務方の私が忍び込んで行くのは、常々居た堪れない思いなのです。」 殿下はクスクス笑いながら、指揮官に話を振った。 「ハルマの貢献を考えると、多少の我儘も呑んでやろうか。確かに1人住まいの部屋に、細いといえどもハルマが入り浸っていたのではウィリアムも狭かろう。指揮官、広い部屋に移してやりなさい。」 僕の明るい顔と、ウィルの赤い顔と、指揮官の困惑した顔、そして殿下の楽しげな笑いが王宮を響かせた。僕はこの時に、殿下が僕にたっぷり差し出した飴を受け取ったせいで、一日馬人間を後日お披露目せざるを得ない羽目になるんだ。 やっぱり王族って抜け目がないよ。 でもおかげで僕は毎日ウィルと寝起きを共にして、騎士団で仲間たちと相変わらず楽しい毎日を過ごしている。平凡な大学生だった僕が、突然この世界に馬として生まれてから色々な事があったけど、どれひとつとして退屈とは縁遠いものだったね。 父さん、母さん、妹よ、僕はそちらへは戻らないけれど、それはどうか許してください。その代わり、僕はこの世界で愛する人と、楽しく幸せに生きていけそうです!          【 完 】 『馬の皮をかぶった大学生ですが、なにか?』ついに完結しました❤️ 131話、約137000文字の、そこそこ長いこの作品に最後までお付き合い下さいまして、本当にありがとうございました♡ 馬が出てくる作品が書きたくて、書き始めたこの作品を沢山の方に楽しんでいただけて、本当に嬉しいです! 毎日更新出来たのも、皆様の応援のお陰でございます!馬の魅力が少しでも伝えられたのなら嬉しいです! 忙しい毎日の、ちょっとしたティーブレイクのお供になる様な、ニマニマ、ワクワク、ほっこりした作品をこれからも書いていければなぁと思っています(〃ω〃)どうぞこれからもよろしくお願いします❤️ 完結しましたので、新作を本日18時より公開開始します♡ 『お家乗っ取りご自由に。僕は楽しく生きていきますからね?』です! よろしくお願いします(*^o^*)
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