215人が本棚に入れています
本棚に追加
人間に解除する方法?
僕はウィルに預かっていてもらっていたネックレスを胸元から外して王子に見せた。
「それがその秘密の書で書いてあるネックレスだと思います。王弟が僕のお祖父さんの兄、ミハルに渡したものだと思います。
そこに丸い窪みが左右に4つづつありますよね。今三つ目がそれぞれ黒い石の様なもので埋まっているのが分かりますか?
僕がお祖父さんから形見として受け取った時、その窪みには気づきませんでした。けれど、黒い石は多分嵌まっていなかった。それは何を意味するんでしょうか。秘密の書には何か書いてありませんか?」
王子はハッとすると秘密の書をパラパラと捲って、目指すページを指差して僕たちに見せてくれた。
「ここを見て。多分王弟は自分でこれをデザインしたんだ。でもここには窪みはデザインされていない。これはどういうことだろう…。」
その時僕はハッと気づいたことがあった。それはとても大事な事の様に思えた。僕が馬に生まれた時、ネックレスは手元になかった。僕がこの世界でネックレスを拾ったのは、あの森の奥の泉の浮島だ。
どうしてそんな大事なことを僕はすっかり忘れてしまっていたんだろう。僕は王子に言った。
「殿下、僕、今思い出した事があるんです。僕はこの世界で馬として生まれて、一年間生活していました。人間に戻れるなんて全然思えなかったんです。
僕が最初に人間に変身したのは、魔物が住む森の奥の美しい泉の側です。僕は怪物に追いかけられて、命からがら逃げおおせて泉に辿り着きました。
そこで馬の姿のまま泉の水を飲んで、力尽きて倒れたところまでは覚えてます。次に気づいたら今の姿でした。僕がその事に驚いているとウィルたちが泉にやって来て僕を保護してくれたんです。」
僕がそこまで言うと、副指揮官が腕を組みながら頷いて続きを話し出した。
「確かにそうだ。ハルマは腰にツタを巻き付けて突っ立っていた。私たちは魔物の森の奥に泉がある事も知らなかったし、そこに素っ裸の見慣れない若い男が居たんで、驚きと同時に魔物かと思ったぞ。
一緒に森を出たいと頼まれてどうしたものか話し合っていたら、突然ハルマが泉に飛び込んで浮島まで泳いで行った。そして何か拾うともう一度戻ってきたんだ。
そうか、あの時そのネックレスを拾ったんだな?しかし不思議な話じゃないか。考えると謎が深まるばかりだ。」
そう言って疲れた様に片手で頭を押さえた。すると殿下の浮き立つ声が部屋に響いた。
「では、やはりその浮島のある泉に行かねばならないね?」
僕は思わず頷いたけれど、殿下のお付きの従者や護衛騎士が後ろで頭を抱えたのを見てしまった。…何かごめんなさい。
最初のコメントを投稿しよう!