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もうひとつの秘密
結局眠らなかった訳ではないけれど、僕たちがぐったりとベッドに突っ伏したのは夜もすっかり更けてからだった。僕は秘密を打ち明けた事で、すっかりタガが外れて、後で赤面するほどの欲しがりようだった。
ウィルは舌打ちして、僕を望み通り攻め立てた。僕はその時ウィルは絶倫なんだと知ったんだ。すっかりドロドロになった僕たちは簡単にシャワーを浴びると、もはや瞼はくっつく勢いで、二人して泥のように眠った。
翌朝、頬に感じる柔らかな感触に、僕はそっと目を開いた。そこには優しい顔をした僕のウィルが居て、僕は手を伸ばしてウィルに抱きついた。ああ、なんて幸せなんだろう。
愛する人とこうやって、夜を明けて一緒に目覚める事の素晴らしさに、僕はうっとりとした。その時、僕は微かに覚えのあるあのゾワリを身体に感じたんだ。
僕が固まってしまったので、ウィルは僕の名を呼んで覗き込んだ。
「…ウィル、僕まだ話さなくちゃいけないことが沢山あった。僕、あと数日で多分フォルに戻っちゃうんだ。」
僕がそう言ってウィルを見上げると、ウィルは目を見開いて言った。
「そう言えば、今までハルは何度も馬になったり、人間になったりしているのか。それって…やっぱり満月と関係あるのかい?」
僕はウィルが驚くほど鋭いので、目を丸くした。ウィルは真面目な顔で僕を見つめて言った。
「以前ハルは月に帰るって言っただろう?それから直ぐにハルは居なくなった。だからもしかして関係があるのかと思ったんだ。」
僕はウィルが握ってくれた手を見つめて言った。
「僕にもどうしてそうなのかはよく分からないんだけど、満月になると身体が変化するんだ。…でもよく考えたらそれって騎士団に来てからかもしれない。
だって、子馬の頃は1年間人間にならなかった…。僕、2回づつ馬と人間になってる。今度は3回目の馬なんだ。これっていつまで続くんだろ。
僕、何となく回数が決まってる気がするんだ。もし、馬のままもう人間の僕に戻れなかったら?」
僕は自分の言葉で、ゾッとする未来を予想して青褪めた。僕はこの世界で馬として生まれた後、確かに楽しく馬生活を生きてきた。でも、それはウィルと愛し合う前だったからだ。
僕はもう愛する人と、心と身体を重ね合わせる幸せを知ってしまった。馬としてウィルの側には居られるかもしれないけれど、それは僕の望む形じゃない。僕はすっかり欲が出てしまったんだ。ああ、ウィル。僕はどうしたらいいんだろう。
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