恐ろしい魔物

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恐ろしい魔物

僕たちは隊列を組んで、森の奥へ分け入って行った。僕と栗毛は後方で先輩馬達に挟まれていたので、僕はすっかり安心して、それこそ物見遊山気分でポクポクとついて歩いた。 先頭の指揮官の号令が伝わって来て、僕たちは立ち止まった。よく見えないけれど、前方ではもう魔物と一戦を始めたみたいだ。明らかに気分の悪くなる臭いがこちらへと漂って来ていた。 流石に僕もボンヤリとはしていられなくて、耳をそば立てて空気を読んだ。馬上のご主人様も先程より緊張感を出したのが、鞍を通して伝わって来た。 隣の栗毛もじっとして緊張してるみたいだ。僕は怖さ半分、好奇心半分で周囲をうかがった。魔物だなんて、ファンタジー過ぎる。 前方の動きがなくなって、無事に魔物を仕留めたようだった。僕たちはまた隊列を組んで歩き始めた。僕はさっきの緊張感を忘れて、すっかり好奇心だけ残して、ウキウキと前に進んだ。 馬上のウィリアムは少し呆れた声で僕の首筋を撫でて言った。 「フォル、興奮するな。ここはもうちょっと緊張した方が良い場面だぞ?」 すると、隣の栗毛に乗ってたウィリアムと同じ年頃の赤毛の騎士が笑って言った。 「本当にフォルは豪胆な馬だよな?私の馬のビッツも良い馬だが、フォルの、そのなんとも言えない雰囲気には負けるよ。」 僕はチラッと栗毛を見た。栗毛はご主人様の言う事をあまり理解してない様子だった。そっか、僕は人間だったせいで話が分かるのかな?でも日本語じゃない気がするけど…。 まぁ、そもそも自分が死んだ記憶もないのに、馬になった時点で可笑しな話なのだから、細かい事を考え出したら負けな気がする。うむ。取り敢えず、馬生活をメインで考えよう。 僕はそんな事を考えながら、前の馬の腰の筋肉を眺めるとも無しに眺めつつ歩いていたら、突然嫌な気配を感じた。それが僕だけじゃないのは、数頭の馬達が突然同時にいななき出したことで分かったんだ。 騎士達は一斉に剣を振り抜き、構えた。僕の左の方から、何か禍々しいものが近づいてくるのを感じた。僕は鋭くいななくと、前脚を地面に打ち付けて、身体ごとそちらに向いた。 「左方より接近!大きさは不明!皆で囲い込め!」 後方に居た騎士のリーダーが指示を出すと、僕たちは大きな半円を作って、魔物を迎える準備をした。 突然木々を押し倒して、大きな熊の様な形状をした、嫌なものが暴れ出てきた。それは大きな爪の様なものを持っていて、騎士達に倒せるのかと僕は一瞬で不安になった。 馬上のウィリアムの緊張が僕を更に不安にさせた。ああ、神様、僕は人参食べて、走り回って居たいだけなんですよぉ!?
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